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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

気づけば、あちこちから嬌声やら雄叫びやらが聞こえてきて、居たたまれなくなる。無言でいれば、実況中継するお盛んな声が、わたしのなけなしの想像力を刺激してくれるおかげで、色々と爆発しそうになる。
「も、もう帰ろう。心配していると思うし」
立ち上がろうとすると巽がわたしの手を引いて、強制的に座らせ、わたしを横抱きにした。
「なにびびってるんだよ」
巽に指で頬を突かれた。
「べ、別にびびっているわけじゃ……」
「じゃあ興奮してる?」
「し、してないし!」
「気にならなくなる方法、教えてやろうか」
「え?」
巽はわたしの耳に囁いた。
「俺だけのことを考えて」
冗談めかしているのに、その声は切なく震えて。
「俺、お前を略奪するから」
巽は悩ましげな息を吐くと、くちゃりと唾液の音をたててわたしの耳を食む。
「ひゃっ」
おかしな声が出てびくりとすれば、巽の舌は耳殻の溝をなぞり、耳朶を舐めて、切なそうな息を吹きかけながら、くちゃくちゃと音をたてて甘噛みをしてくる。
ぞくぞくが止まらないわたしからは力が抜け、思わず巽の手にしがみつくようにして乱れた息を繰り返せば、半開きになったわたしの唇を、身体を捻るようにして巽が塞いできた。
「んんっ、んんんっ」
抵抗をものともせず、角度を変えて重なる唇から、肉厚の舌がわたしの歯をこじ開け、侵入してくる。
ざらついた舌に口腔内を凌駕され、そのまま快楽を引き出されて翻弄されれば、耳に届く甘ったるい声が誰から発されているのかわからなくなる。
唾液の音。荒い息の音。
なにより、好きな男との蕩けるような気持ちいいそのキスは、わたしの身体の中で燻った火を煽る。
腰がひくついて動けなくなってしまい、巽に全体重を預けてしまった。すると、唇を離した巽は柔らかく目を細めて、良い子と言って首から襟ぐりまで舌を這わせ、なけなしの胸の谷間に舌を差し込んで揺らす。

