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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実
 
「あっ、駄目っ、ひあっ、それ駄目……っ、ああっ、ぁぁあ……っ」
「聞こえる? ぐずぐずに蕩けきっているお前の音。なにが濡れねぇ、だよ。俺だけに今もこんなに反応して感じるなら、もう決定的じゃね? ……お前は、俺が好きなんだよ」
「ちが、ちが……」

 そうだ。
 決定的なくらい、わたしは巽が好きなのだ。

 巽に断言されて、さらに好きという気持ちが濃くなる。

「じゃあお前は、安っぽいAVみたいな乱交現場で興奮したわけ?」
「耳に、耳に息を吹きかけて喋らないでよ……っ」

「アズ、俺のものになれ」

 命令調の熱っぽい声を吹き込まれると、頭の芯まで巽の色に染められてしまう。

「俺に溺れろ」

 巽の指は音をたてて蜜壷の中に滑り込む。
 異物を体内に迎えたわたしは、目をチカチカとせながら仰け反り、それに慣れようとハッハッと浅い息を繰り返した。

「アズ、好きだ」

 ……息が止まる。

「俺に堕ちろよ」

 段々と声が切ないものとなってくる。

「……好きなんだよ、お前が。誰にも渡したくない」

 わたしの身体が、巽の言葉が嬉しいときゅんきゅんと疼いているのを、わたしの深層にいる巽に感じ取られてしまった。

「……やっぱりお前、俺が好きだろ」
「ち、違う……っ」
「俺が好きだというたび、お前の中きゅうきゅうと俺の指締め付けて悦んでいるくせに。もう観念して、俺にすべてを委ねろ」

 昨日より心がぐらついている。
 巽の気持ちを知ってしまったから、巽に相手がいるからと拒めない。
 巽と結ばれたい気持ちの方が強くなり、同時に、まだなにもけじめをつけていないのに、このまま快楽に流されてしまっていいのかと、葛藤する。

 そんなわたしにお構いなしに、巽の指はぐじゅぐじゅと重い音をたてて、ゆっくりと抽送を始める。
 疼く中を擦られる度に、甘い痺れが身体に奔り、わたしから断続的な声が止まらない。
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