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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ

「アズ、遅くなってごめん……」
それは――肩で息をしている巽だった。
「どうして……」
「手錠を切るのに、思った以上に時間がかかってしまって、ごめん。頬、痛かったな。無理矢理、痛かったな……。もう大丈夫」
わたしを抱きしめる巽の手には手錠が食い込んで、血が流れていた。鎖が不自然に垂れているところを見れば無理やり引き千切ったのだろう。それは足首も同じだった。
「怜二さんは……」
「そこで気絶してる」
「由奈さんは……」
駆けてくる足音がした。
「やめてよ、やめて!! 触らないでよ、触っちゃ駄目!!」
それは恋に狂った女の叫び声だった。由奈さんはわたしと巽を引き剥がそうとするが、巽はわたしを離さなかった。それどころか、由奈さんを突き飛ばして怒鳴った。
「いい加減にしろ!!」
すると彼女は尻餅をつきながら、子供のように足をバタバタさせながら泣いた。
「嫌だ、嫌だ、離れて!!
私の杏咲ちゃんに、触らないでぇぇぇ!!」
「え……」
巽ではなく、わたし?

