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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ
 
 わたしを初めての友達だと言う、優しい由奈さんを好きだった。
 だけどわたしは、由奈さんに期待させる素振りをしてしまったのかもしれない。
 女性同士は恋が成り立たないと、最初から甘く見ていたために。

 由奈さんが求めていたのは、性別のしがらみを超えて、自分に溺れてくれるような激情だったのだろう。
 わたしが巽に、巽がわたしに求めるような……特殊ではない、普通の恋情。
 ……それがひとには理解を得られず、気持ち悪いと思われるとわかっていればこそ、恋は激化する。

 そう、歪んだ恋の形は、わたしも巽に抱いていたではないか。

 義弟に禁断の恋情を抱き、欲情してセックスをして、周囲を滅ぼしたのだから。

 わたしは由奈さんを責めることは出来ない。

「ねぇ、杏咲ちゃん。由奈と……」
「由奈さん、気持ちはありがたいけど、ごめんなさい。わたし……好きなひとがいるんです」

 わたしは由奈さんの伸ばした手を取らずに、まっすぐと由奈さんの目を見て言った。
 わたしなりの誠意が伝わればいいと思う。

 由奈さんは……歪んだ笑いを見せる。

「広瀬くんはわたしとしていたんだよ? 杏咲ちゃんが変なものを入れて濡れたふりをしているのが辛いって、自分が下手で杏咲ちゃんにお泊まりを断られて辛いから慰めて欲しいって」
「……っ」
「由奈の濡れたそこを犬のように舐めて、由奈の中をたくさん擦って奥まで突いて、たくさん出していたんだよ? 動物のように吼えながら。杏咲ちゃん、そんな広瀬くん、見たことないでしょう」

 胸がきりきりと痛む。

「わたしの、せいです。わたしが、嘘をつかなければ……よかった」

 怜二さんを悩ませたくないから、偽りの蜜で誤魔化そうとした。
 それが怜二さんを苦しませていたことに気づきもせず。

「わたしは……巽が好きです」

 
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