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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ

付き合う――巽と本当にそんな関係になれるのだろうか。
それはまるで夢を語るかのように現実味がない。
それでも、そんな日が来るのは素直に嬉しいと思った。
それは昔から、わたしが焦がれてきた瞬間だから。
「今のペースなら来月には出来上がるよ? それだったら、せめて再来月の口紅の披露……」
「却下。口紅が完成したら! それ以上は待てない。お前俺の理性をなんだと思ってるわけ? 二十年以上惚れ続けた女が俺を好きだと言っているのに、黙って見ているなんて俺、神様じゃねぇぞ!?」
「でも、たった一ヶ月で……」
「だったらルミナス社員全員クビ。俺の譲歩を受けたら全員アムネシア社員。辞令をすぐにでも出すけど?」
「職権乱用よ!!」
「うるせーよ。職権使わないでいつ使うよ。さあ、どうする?」
「う~」
「はい、決まりね。杏咲ちゃん、俺と頑張って一日でも早く、俺を欲情させる口紅を作ろうね」
駄々っ子に、頭を撫でられて宥められたのが悔しくて堪らない。
同時に、そんな巽が可愛くて仕方がない。
可愛くて愛おしくて、たまらなくなる。
「来月まで、また男作るなよ? それともう怪しいグッズは買わないこと! 定期的に家の中チェックするから」
「は、は!?」
「俺は、お前以外には勃たねぇっていうのに、お前は他の男のために濡らそうとするエロい女だし」
「でも巽、由奈さんにいろいろされて、変化があったんでしょう?」
「あ、あれは不可抗力で……。大体お前が広瀬にされているから……」
わたしは巽の唇にちゅっと自分の唇を重ねた。
「消毒」
すると巽は、ぼっと顔を真っ赤にさせるものだから、わたしの方が驚いた。

