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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ

***
「なにぃ!? 土曜日に広瀬氏と別れた!?」
月曜日、昼食に香代子を誘い、アムネシアの中庭のベンチでお弁当を食べた。
午後から降水確率が高いせいか、今はやけにあたりは暗い。
さすがに由奈さんの性癖とか、由奈さんと怜二さんが関係あったことは言えず、メインだけ告げると、香代子は驚きのあまり、口に入れたばかりのコンビニ弁当のかやくご飯をわたしの顔に吹いてしまった。
言うタイミングを推し量り違えたようだ。
「それって……、今朝、広瀬氏と由奈嬢から辞職届が郵送されてきたというのと、関係ある?」
……ふたりは月曜日、姿現さずして揃って辞職した。
確かにわたしもふたりに会い辛かったし、また揉めたくないと思っていたから、ほっとしたのは正直あったけれど、やはり複雑ではある。
「ないとは言い切れない。わたし巽がやっぱり好きで、怜二さんを裏切りたくなかったから」
すると聡い香代子は、それだけで大体のところは掴んだようだ。
「タツミィも喜んだだろうね。想い続けてきたんでしょう、杏咲ちんのこと」
「ど、どうして……」
「そりゃあ、わかるよ。タツミィ、広瀬氏に目で喧嘩売っていたし、恋人放置で倒れた杏咲ちんをスーパーマンの如く連れ去ったし。嫌いな女にあんなことは出来ないよ」
香代子は、壺漬けを小気味のいい音をたてて囓る。

