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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ

「結局のところ、あんたらは姉弟であった昔から、ずっと両想いだったということでしょう? よかったね。じゃあもう付き合ってるの?」
「……付き合ってはいない」
「なぜに? 付き合えよ、らぶらぶしちゃえよ」
「お互いがフリーだったらよかったけれど、けじめは必要だと思うんだ」
「禊ぎはいつまで?」
「……口紅が完成した時に。巽にルミナス社員を人質にされて、押し切られた」

 すると香代子は大爆笑だった。

「生真面目な杏咲ちんのことだから尼寺でも入りそうだったから、タツミィは慌てたんだろうな。尼寺にもこそ泥はいるだろうしね。ぐははははは」

 ひとしきり笑ってから、香代子は真面目な顔を向けてくる。

「実はさ、杏咲ちんが広瀬氏と別れて、ほっとしてる。正直、広瀬氏はいけすかなかったから」
「え……?」
「前に何度か、ルミナスの企画がユキシマに先行販売されて、ネットでパクリの汚名着せられてさ、回収した騒ぎがあったじゃない? その商品があれば、ルミナスだってもっと大きくなれたほど、大ヒットしたよね」

 ユキシマというのはアムネシアよりも大きく歴史がある、業界上位の上場会社だ。

 だから太刀打ちできずに、風評被害を出来るだけ抑えるために素早い商品回収をするしか出来なかった。
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