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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

――絶対俺を煽ってるだろう! 清い関係では物足りないのか、お前は!

 本音を隠しきれずに、思いきりぎっくんと反応したところをまた見付かって、日頃の鬱憤を晴らすかのように、このピンクローターで嫌というほどいじめられ、さらには会社でつけさせてくるという暴君ぶり。

――折角アムネシア社員にさせたルミナス社員、また切ってもいいんだけれど。

 今月一日付で正社員となれた元ルミナス社員を守るために、わたしはこうやって巽にいじめられる。
 わたしが感じると巽がさらに甘々になって、キスをしたりぎゅっとしてくれるのが愛を感じて嬉しいなんて、言いたくはないけれど、まあ……合意ではあるのだ。

 専務室という巽の牙城でいちゃいちゃしていると、部屋の外がやけに騒がしくて巽と顔を見合わせた。
 甲高い女の声が聞こえた時、巽がはっとしてわたしを抱きしめたまま、スカートを下ろしてピンクロータを背広のポケットに入れ、わたしの顔を彼の胸に押しつける。それは数秒の早業だった。

 そして――。

「巽っ! 婚約破棄とはどういうこと!?」

 ドアを開けて入って来た、この声――。

「随分と、予定よりお早いお帰りですね、……母さん」

 お義母さん!?
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