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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

――義父さんが好きだったんだ、母さんは。

 わたしの父は浮気を何度もしていたらしい。
 夫に浮気をされて離婚をした義母は、またも繰り返される悲劇に、少しずつ歪みを見せるようになり、わたしが巽を男として意識をした中学時代に、義母もまた巽を男として意識を始めたようだ。

――繋がったわけじゃねぇよ。手と口だけだ。射精が出来る歳になるとやたら繋ぎたがったけど、それは本能的に拒否をしていた。それから中学校で性知識を教わり、いけないことだとわかった。

 わかったけれど、義母の誘いは狂気じみていて怖かったようだ。

――お前と繋がりたいと思っていたのも、俺が早熟だったからだ。だけどお前が無視してくれたおかげで、お前以外に反応が出来なくなったのは、母さんへの防御になった。要らないからな、母さんにとっては勃たない息子は。

 その息子が、義理の娘とセックスをしていた。
 自分から息子を奪い取ったのだと、そんな癇癪的な錯覚が起きたのはわからないでもない。

――俺は、義父にも裏切られて泣く母が不憫だと同情して、見捨てられなかった。母さんを傷つけたことには変わりねぇし、だから認めて貰おうと何度も俺はアズが好きだったんだと根気強く言った。

 だけど聞く耳を持たなかったと巽は自嘲気に笑う。
 義母の愛に包まれた巽を不埒に誘うわたしは、悪魔なのだろう。

――母さんは、自分の美貌の衰えを信じたくないんだ。年頃のお前は綺麗になっていくのに、自分は衰えるだけで。俺の実父も義父も、自分より若い子と浮気をしているから余計に。

 いつだって義母は、女であり続けたいのだろうと巽は言う。
 そして若いわたしに対抗して選ばれようとした母の性的な強要が再開し、巽は抱かないことに癇癪を起こす義母の狂気に怯え、わたしに会いに実家に来たらしいけれど、わたしは家を出た後だったようだ。
 
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