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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

――八方塞がりでとにかく荒れた俺を、モデル会社の社長が拾ってくれた。俺がモデルで顔が売れてきたら、会社に母さんが乗り込んできてまた干渉が始まった。それを社長が懸命に仲介してくれて。気づけば前ユキシマ社長の愛人をやって落ち着いてくれた。
それでもわたしと会っているんじゃないかと猜疑心が強く、怜二さん経由でわたしの所在がわかっても、すぐに結婚してしまうんじゃないかと不安を抱えながらも、義母がわたしになにかをすることを怖れて慎重に動き、会社ごと貰い受ける強行に出たという。
――母さんは、誰かとセックスをしていれば落ち着く。女であることを実感出来ていれば、それでいいんだ。別に俺でなくとも。俺がたまたま身近にいただけなんだ。
わたしを見て。
わたしはまだ女なの――。
そんな悲哀に満ちた叫びが聞こえてくるようだ。
相手が息子だろうと、男なら誰でもいい。
彼女を女として愛する男との、永続的な恋の夢に溺れている。
同時に、巽を羊水(じぶん)に溺れさせて、己の胎内に還そうという……恐ろしいまでの母の狂気。
これは、無償の愛(アガペー)を捨てた義母が望む、歪んだ溺恋(エロス)の形なのか。
親にそんなことをされているなんて、気持ち悪いだろうと巽は、悲痛さを滲ませて笑う。
――俺だって、過剰すぎる母の愛とやらに、今でも悪夢を見て飛び起き、吐いているくらいだ。それでもそんな親でも捨てられない。だから逃げていたけど……なんとかしなきゃなんねぇな。
わたしはどうすればいい?
いつもシグナルを感じられない、わたしがすべきことは。

