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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

「なあ、彼女さん。あんたは、アズか?」
「え、はい。杏咲と言います」
「あんたなんだろう? 息子を溺愛するお袋さんに引き裂かれて、どこかに行ってしまった血の繋がらないお姉さん。あのお袋さんなら、今でも苦労するなあ」
「え……」
「巽を拾った時、無感情で人形のような奴だった。顔の作りがいいだけに余計に不気味でね、心身共にボロボロだった。そんな巽が『アズ』と呼んで泣いたんだ。救いを求めるように。だから俺は言った」

――全国的に有名なモデルになれ。そうすりゃ恋い焦がれるアズも、お前を見つけて連絡してくれるだろう。

「TATSUMIは結構有名だと思ったけど、なんで連絡してこなかった? 巽が心配していたように、巽を嫌っていたのか?」

 社長は鋭い目でわたしを見る。

「とんでもない! 知らなかったんです。その頃わたしは一人暮らしをするのにアルバイトに必死で。巽がモデルをしていたと知ったのは、再会してから友達に言われてで」
「そうか。あいつ、アズからの連絡を健気に待っていたぞ。嫌われていると落ち込みながらも再会を夢見て、アムネシアという名で有名な化粧品会社に必ずアズは来ると俺のコネフル活用さ。それで専務になれたんだから、あいつは実業家に向いているのかもな。一途な奴だよ、モテモテなのにアズ命だからな今も」

 わたしは唇を震わせた。
 それなのにわたしは、巽以外の男と付き合っていたなんて。

「なぁ、アズ。血という断ち切れない絆があるのは、弱みであり強みだ。巽とお前には血の繋がりがなく、巽とあのお袋さんには血の繋がりがある。お前の立場は巽とは違う」
「……はい」
「巽にできなくて、お前に出来ることはあるはずだ」
「はい」
「お前も苦労はしただろう。だけどその上で……巽を大切にしてやって欲しい。もう二度と巽が泣かないように、巽の手を離さないで欲しい。本当に良い子なんだ」

 わたしの父が、社長のように愛に溢れていれば、きっと巽を守れたのだろう。
 わたしもこんな男性を父に欲しかった。
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