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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

***
「色が変わらないかな、溺恋」
色の特殊効果について、香代子がそう言い出した。
「昔からよくあるじゃない。青い口紅だと思ったのに、つけると赤くなるというの」
「ああ、見た目透明なリップだけど、つけるとピンク色になるのも、学生時代流行ったよね」
「そう。そのギャップって貴重だと思うのよ。だけど紫とか青とか明らかな寒色系は冒険だから、客も躊躇うと思う。やはり色は無難にしたい。アムネシアローズとほんのりパープルがかったピンクとかは?」
カラーサンプルを見て、目視で許容出来る色の範囲を決めていく。
「後は変化の時間だよね。すぐ色が変わるのは無粋だわ」
「じゃあさ杏咲ちん。OLなんだから、昼間は健全な色、アフターはちょっと冒険の色ということで、グロス効果が維持出来る範囲内で、研究所にテストして貰おう。よし、これをルミナス組で煮詰めて、アムネシア組にも意見聞いてタツミィに提言するわ。こっちは任せて」
「ありがとう~、香代子!!」
「当然でしょう。由奈嬢と広瀬氏に杏咲ちんを渡さないから!」
香代子はアムネシアを代表する企画部のエースになれると思う。
巽も早々にルミナスの企画をしている香代子に一目置いていたらしいため、怜二さんの実力を測るためにも企画書を提出させ、それをアムネシア企画部に見せたそうだ。
その斬新さはアムネシアにはなかった色のようで、香代子に対する評価が上がった中で、今回のこの口紅騒動だ。俄然躍起となる香代子を中心として企画部はまとまりつつあり、香代子はアムネシアでも光り始めた。
誰かの影になることはなく。

