この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

「お疲れ様」

 ふたりきりになったのは、何日ぶりだろう。

 色々と言いたいことはあった。
 恋しくて、巽の背広に何度もお世話になった。

 ほとんど皆がいる時の業務連絡くらいしか出来なかったから、こうしてゆっくりと彼の優しい眼差しを受けるのは久々で、顔も体も火照ってしまう。

 ああ、やっぱり――わたしは巽が好きなんだ。

 そう改めて実感するほど、わたしの心身は悦びに打ち震えている。

「お前を俺だけのものにするために、すげぇ働いた。お前の声、聞きたくてたまらなかったけど、俺達のアムネシアを形にするために、我慢していたよ」

 〝俺達のアムネシア〟

 胸が切なく疼いてしまう。

「恋い焦がれすぎて、背広にお前の残り香を感じた気になり、ひとり悶えていた。相当に俺、やばいだろ。病院行って薬でも貰ってこようと何度も思ったけど、仕事あれば行けないし」

 ……疲労感漂う顔で笑う巽を見て、黙っているのが居たたまれなくなる。

「い、いや……やばくないよ。やばいのはわたしの方で」
「え?」
「だ、だからその……、その背広、わたしが失敬していたことがあって。していたことがある、というかほぼ毎日羽織らせて頂いていて」
「……寒かったってこと?」
「そうではなく、その……巽欠乏症に陥って」

 巽は言わせる気らしい。
 説明しろと目で促され、仕方がなく観念する。

「……巽にぎゅっと、されたくて」

 ねぇ。なにか、反応してよ。
 しかし巽は、石のように固まっている。
 
 きっと呆れ返っているんだ。言わなきゃわかったと羞恥に真っ赤になるわたしは、話を強制終了することにした。

「た、大変お世話になったのです。以上」

 すると巽が怒鳴った。

「以上じゃないよ、お前っ! ひとをオカズのようにして、朝っぱらからなに煽るんだよ。我慢に我慢を重ねてきた俺を、暴走させたいのか!?」

 ……わたし以上に巽の方が真っ赤だった。
/207ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ