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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

ユキシマの発表はスマホのニュースで見た。
昔以上に色香を漂わす義母が和装姿で映り、怜二さんが発表していたが、巽は途中でそれを切った。
「俺達は俺達の溺恋を貫く」
街頭広告は、ユキシマの溺恋ばかりだ。
『あなたとの恋に溺れさせる魔法』というキャッチが映えた構図で、わたしの広報能力では考えつかないほどの訴求力もある広告だ。
対するアムネシアは、巽はいいとして相手がわたしだ。
どう考えても勝ち目がなくて、まためそめそめと泣いてしまった。
発表予定のホテルには、ひとで溢れ返っている。ユキシマも午前中このホテルを使い、その時に居合わせた報道陣も流れているのか、ホテル利用客とは思われないひと達を多くラウンジで見かける。
使う大広間は、二階。
巽は社長と副社長と共に壇上に座り責任者として演説をしないといけないため、わたしとは別行動になる。
ひとりになったわたしが、大広間のドアの外で背伸びをしながらきょろきょろしていると、香代子が汗だくで駆け込んできた。
「杏咲、大変。由奈嬢に先回りされて、販売するところがなくなった」
「えええ!?」
ここにきて由奈さんの名前を聞くとは思わず、さらに驚いた。
「先回りって……溺恋は……」
販売場所がなければ、見て納得して買って貰うことは出来やない。
まさか、そんな邪魔をされるなんて――!

