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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

「電波ジャックだ……」

 誰かがそう呟いたのがわかった。

「全国のテレビやネットも、このCMが流れているらしい」
「ハッキングか!?」 

 加賀社長は、否応にも全国民を釘付けにさせる、強行かつ派手な方法をとったようだ。

 CMは他に四バージョンあった。
 それぞれに音楽が違い、どれもわたしの顔は口しか出ないが、わたしの口の動きや、わたしと話している巽の表情が感情を語っていた。

 いつ撮られたのか記憶がない巽の表情がある。
 わたしを小突いたり、甘やかだったり、切なそうだったり、映像の中のわたし達は、とても幸せそうに見えた。

 わたしは、巽の愛おしむような眼差しに静かに泣いた。
   
 好きだ。
 どうしてもわたしは、巽が好きだ。
 巽が手に入るなら、他になにもいらない。
 巽だけが欲しい。

 この恋を、諦めたくない――。

 強制終了を告げるように電気がついた時、壇上に戻っていた巽はマイクを握っていた。

「私達アムネシアが作った溺恋に、詳しい説明は致しません。ただ、常識や理屈を超えて恋をする者達や奪いたいと思えるほどの相手に出会った男女が、幸せになって欲しい……そう思って開発しました」

 巽の艶やかな声が静まりかえった会場に響き渡る。

「私も恋をしています。二十年以上も前から、巷では気持ち悪いと思われる類いの恋でした。そのせいで悩み、荒れて、死にたくなりました。親の理解も得られませんでした」

――この売女っ!!

 わたしの目からぽたぽたと涙が零れる。
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