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アムネシアは蜜愛に花開く
第6章 Ⅴ アムネシアは蜜愛に花開く

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アムネシア本社はCMと口紅について問い合わせの嵐だったようで、その電話応対にパニックに陥っていたという。
裏方で活躍した社員達を呼び寄せ、完売という偉業を成し遂げて凱旋した社員と共に、社長の自腹で打ち上げパーティーへと雪崩込むことになった。
「がははは! AACに依頼してよかっただろう?」
加賀社長ら協力してくれたAAC所属員達も呼んで和気藹々とした中、アムネシア社長だけが財布を見て青ざめていたのが印象的だ。
「AACは人物をいれた広告においてはトップクラスだが、残念なことに人物以外のデザインには弱い。だからそこを補完さえしてくれれば、AACの名前も売れてお前んとこの名も上がる。なあ巽、アズ。AACはお前達の専属、運命共同体だものな」
大恩ある加賀社長に絡まれた挙げ句に押しきられた巽は、観念したように言う。
「わかりましたから。人物以外のデザインが出来る素晴らしいデザイン会社とタイアップ出来るようにしますから! 皆で名を売りましょう」
半分自棄になっていたが、加賀社長は大喜びだ。
「さすがは巽だ。AACと末永い付き合いをよろしく、アムネシアの皆さん! さあ親睦を深めるために飲みましょう。巽、お前は立役者なんだから、もっと景気よく飲めよ、この。がはははは」
巽にヘッドロックする加賀社長と、疲れた顔をしながらも笑みを見せる巽。こうやって巽は、加賀社長のバイタリティに感化されて、モデルのTATSUMIとしての地位を築けたのだろう。
微笑ましいふたりの関係に、わたしはくすりと笑いながら、皆にお酒を注ぎに回った。

