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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

「ひゃく……なんで俺に言ってこなかったんだ。そうしたら俺、直談判にまた行ったのに」
「わたし、あのひとに出来ない女だって思われたくないんです」
「……きみのことだ、寝てないんだろう? だったら俺や山本が手伝おう。今は仕事らしい仕事もしていないから」
わたしはすりと、怜二さんの胸に頬を寄せる。
「誰の力も借りずに、わたしだけの力でやり遂げたいです」
「……しかし」
「お願いします。ひとの案を持っていけば、きっと彼はわかってしまう」
「……きみと彼が会ったことは、よかったのかな」
ぼそりと怜二さんは言った。
「最初から、彼がきみを見る目が違っていたから」
「ああ……、凄く嫌われていますよね」
「そうじゃなく」
「?」
「いや、いい。いいんだ……」
怜二さんはわたしの顎を持ち上げるようにして、唇を重ねた。
久しぶりの彼の唇は冷たくかさついていた。
「ん……」
でも気持ちがいい。
枯れているわたしにでも、女だということをわからせてくれる甘いキス。
舌を縺れるようにして絡み合い、ちゅくちゅくと音がして声が漏れてくれば、怜二さんは両手でわたしの頬を挟むようにして、いつになく荒々しく舌を動かす。
「は……」
「んん……っ」
わたしの頭の中から企画も巽も忘れさせる、そんなキス。
それなのに、わたしの身体は濡れない。
巽と再会した時も、彼とふたりで応接室で話した後も、わたしのショーツには、滴るくらいに淫らな蜜がべっとりと濡れていたというのに、今はそんな変化が全くない。
……いつもの如く。

