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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

わたしにとって禁断の愛というのは、昔の義弟であった存在への邪恋だ。
息が詰まるような苦しさを覚えながら、どうにか忘れようと足掻いてみても、忘れることが出来なかった相手。
やめようと思っているのに、否応にも相手の匂いや熱に過敏に反応してしまう、自分の意志とは裏腹に向かってしまうあの吸引力。
失ってから恋情の大きさを思い知るのではなく、失わないように攻める……そんなものが口紅で表現を出来たら。
……わたしのような無残に散った結末ではなく、別の幸せな結末を奪取出来るくらいの勇気と色気を後押し出来たら。
「禁断の愛……」
それは、怜二さんに対する裏切りかもしれない。
しかし、企画を成功させるために、ルミナス仲間を助けるために、禁断の愛の表現のために。
そんな言い訳がましいことで心の中で怜二さんに謝りながら、封印していた巽への恋情を解く。
――清楚を演じている恋人を盲信しすぎて、考えもしてねぇだろう。恋人が過去に義弟とヤッていたなんて。
苦しくてたまらない。
痛くてたまらない。
わたしは十年来の感情に涙を流しながら、ペンを進ませる。
それでも、リアリティと具体的な目的を掲げるためには、わたしにとっての恋愛的激情は、巽に向けてのものしか頭に浮かばなかったのだ。
……怜二さんではなく。
わたしが巽に対して恋情を抱いていたことは、誰にも悟られてはいけない。
怜二さんにも、由奈さんにも、巽にも。
……大丈夫。わたしは上手くやれる。

