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アムネシアは蜜愛に花開く
第2章 Ⅰ 突然の再会は婚約者連れで
 

「アムネシアの専務と怜二さんは会ったことがあるんですよね?」
「ああ。同業でも上位会社に挨拶はしていたからな。氷室専務は年下ながら凄いやり手で、アムネシアの危機を救った功績で専務になったらしい。絶世の美形で威圧感も半端なくて、これが支配者の器かと正直びびったよ」
「……由奈さん、大丈夫かしら」
「遊びではないことを願うよ」
「まあ、ベタ惚れなら大丈夫かもしれませんね。……美男美女カップルかぁ」
「俺達だって負けてはいない。うん、美女の部分と男のベタ惚れという点では特に」

 怜二さんはわたしの唇を奪い、燻っている火が見える茶色い瞳で微笑む。

「専務に会っている時、ちょうど会社から電話がかかってきて。スマホの待ち受け画面を見られてさ」
「待ち受け?」
「ああ。きみとのツーショット」

 わたしは咽せてしまう。

「専務に色々聞かれて、大分惚気たんだよ。この幸せの延長で近く彼女と家庭を持ちたいんだとか」
「……っ」
「そうしたら専務が深く考え込んで。……思えば、それから三嶋と付き合ったのがすぐなんだから、感化されて奮起したのかもしれないな、自分の恋愛成就に。言わば俺が彼の背中を押したわけだ。あははははは」

 そして怜二さんは笑いをやめて、わたしの唇を指の腹で撫でながら言う。

「……先を越されたくないな、専務と三嶋に」
「え?」
「結婚」
 
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