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僕の彩芽
第9章 九
「蝶子さん、私……」
「えっ?!働いてくれるの?!彩芽!」
「ちっ、違います!違います!」
……あ、あっぶねぇぇぇ!情に流されて頷くところだった。蝶子さんも同情を引くのが上手い。捨てられた子犬の様な瞳で見るんだから。
「そう……やっぱり無理よね。ごめんね、彩芽、我が儘を言って……」
「私の方こそすみません……」
「帰るわね……」
くるっと扉の方へ向き直り、蝶子さんは進み出す。哀愁漂う背中。……本当に申し訳ない。手助け出来なくて。
「また遊びに来て下さいね、蝶子さん」
蝶子さんの後ろ姿を見つめながら、片手を振った。――だが、突然蝶子さんが足を止め、
「……なーんて、簡単には諦めないわよ?」
怪しげに目を細め、此方を振り返るとゾクッと鳥肌が立つ。……な、何?蝶子さん、どうしたんだろう……。そう思った時には、既に蝶子さんが指をパチンと鳴らしていた。
「あんた達!カモーン!」
同時に勢い良く開く扉。リビングへ入ってくる初対面の男達、三人。全員黒いスーツ姿でサングラスを掛け、背が高くがたいも良い。……物凄く、こぇぇぇ!
「何なんですか!蝶子さん、この人達!」
「ごめんね、彩芽。こうするしかないのよ。来てくれないなら、拐うしか」
「拐う……?えっ?えっ?」
呆然としている内、三人の男達から頭上に抱えられる。