この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕の彩芽
第1章 プロローグ
母親は私が2歳の頃、離婚した。それからはシングルマザーで、貧乏なりに今日まで私を育ててくれた。そんな母親に迷惑を掛けないよう、友人達が部活動で青春の汗水を流している頃、私は工事現場のバイトで汗水を流し、バイト代は全額母親に渡していた。……それでも、生活は苦しかったんだろう。いつの間に500万の借金を……全然知らなかった。
『お母さん……嘘だよね?』
自然と顔がひきつる。そんな私へ、母親は無表情のまま容赦なく言い放つ。
『彩芽、行くのよ。いざ!風俗街へ!』
娘にこんなことを言えるのは、確実にこの人ぐらいだ。無情過ぎる。
『いや、風俗とか……絶対無理だよ……』
『じゃあキミ、500万返済するまで、うちの店で働いて貰うね!』
『いや、だから、無理って言ってるんだよ……』
『そうと決まったら行きましょ!』
トントン拍子に話が進み、大男が革靴を履いたまま部屋へ侵入すると、私のモッズコートの首根っこを掴んで外へ向かい歩き出す。二月の夕刻にはふさわしい、白い息を吐きながら。
『大丈夫だよ!うちのお店には、しっかりした研修があるから!』
『研修って何なんだよ!』
薄暗い空に見える星と月が嘲笑うかの様に、そんな私達を見下ろしていた。