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僕の彩芽
第5章 五
「えっ?店?……えっ?」
何なの、蝶子さんって。冷たい人なのかと思ったけど、明るい性格なのかな……。
「良かったな、蝶子さんから気に入られて。蝶子さんは高級クラブのママだ」
「ママ?!」
だから綺麗なんだ……そう感心しながら、心の中で納得する。
「ねぇ彩芽、うちの店で働かない?給料弾むから!」
「私がですか?!」
「あなたならNo.3ぐらい簡単になれるわよ」
「そんなわけないじゃないですか!」
蝶子さんから顔を離されたものの、首に両手を回されたままあり得ない言葉が鼓膜に入る。蝶子さんからは香水の良い香りがして、女の私でも惚れそうだ。
「蝶子さんと比べたら、私なんて月とすっぽんですよ!」
「あら、そんな事ないわよ~。私はメイクで化けてるだけだから。彩芽もメイクしなさい!絶対綺麗になれるから!そしてうちのお店に来てちょうだい」
「良いです!絶対に、良いです!」
私が綺麗になるなんて絶対嘘!良い話には絶対裏がある!引っ掛からないようにしないと……!
「待ってて。車にメイク道具乗せてあるから。持ってくるわ」
「えぇー!」
私から離れて蝶子さんが玄関の方へ歩き出すと、私は顔を青ざめるしかなかった。リビングのドアの前に立ったままポツリと豪が呟いても、言い返す余裕もなかった。
「……出来なくなったな」
うるせぇ、お前は黙っとけ――