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僕の彩芽
第8章 八
……――その後、少し寝て目を覚ますと、隣で寝ている秋人さんを起こさない様にそうっと寝室を出た。リビングのソファには、私服姿の豪が座っている。
「豪……」
「彩芽、どうだった?!部屋から出て行けるって?!」
「それが……」
無邪気な子供の様に目をキラキラさせてる……。本当に豪って秋人さんが好きなんだな……。
「……ダメだった。500万、突き返されて……」
「は?」
「だから、500万返す……」
豪へ近づいていくと、私は500万の入った茶色い封筒を豪へ差し出す。冷たい豪の視線が、棘の様に胸へ刺さる。
「どういうことだよ……てめぇ、裏切ったのか?この卑怯者」
「っ、違う!私だって、本当に出て行きたいのに……秋人さんがダメって……」
泣きたくなかった。辛くても笑っていれば、きっと良い事があると思って。でも、もう限界だ……。誰か助けて……。
「家に帰りたい……ペットなんて嫌だ……」
一気にぶわっと溢れる涙。追い詰められる心。豪に弱音を吐いても仕方ない。豪は借金取り。私の気持ちなんか分からない。
「あー……言い過ぎた。彩芽、こっち来い」
「何?」
少し気まずそうな豪。何だろうか。
「俺も父親が借金してたからよ、気持ちが分からなくもねーんだよ。ほら、鼻水拭けよ。汚ねぇな!」
豪の隣へ座ると、テーブルの上のティッシュを投げつけられる。それを受け取り、私は涙と鼻水を拭いた。
「うちは母親が借金返したから良かったけど、それも俺の大学資金の為に母親が貯めてくれてた金だったんだ。父親と母親はそれが理由で離婚した」
「そうだったんだ……」
お父さんの借金のせいで、大学進学は諦めたって事だろうか。
「元々俺バカだから、大学行く気なんて全然無かったけどな!」
明るく笑う。そんな豪を見て、私は少し明るい気持ちになった。