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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第3章 初めての夜ば…もとい、「お誕生日」の贈り物
(ううう…今更、恥ずかしくなってきちゃったっ…)

よくよく考えれば、女性の方から殿方の寝室に押しかける、などというのは、大層はしたない行為です。
姫が夜這いをしようと思った最大の理由は、あくまでも「おめでとうと一番最初に言って貰う」という事なのですが、世間的にみると、とてもそうとは思えません。
サクナが姫の訪問を拒否することなど有り得無いでしょうが、バンシルが溜息をついて嘆いたような反応の方が、一般的には当然でしょう。

扉の前でためらって、うろうろと何往復もしていた姫は、せっかくだからノックだけはしてみよう、と決めました。
一回だけノックをしてみて、応えが無ければさっさと帰ろうと決めて、拳を握って、扉を軽くコンコン、と叩きました。

叩いてしばらく待ってみましたが、扉はしんとしています。

(…良かった、開かないっ!残念だけど、開かなかったっ!!)
姫が半分残念に思い、半分ほっとしながら、踵を返しかけた時。


「…お前、ノックしといて何帰ろうとしてんだ。」

…という囁き声と共に、扉がすっと開きました。

「ふぎゃ…!!!」
「この馬鹿!夜中だぞ!!」

囁き声の主により、扉の内側から伸びた手に口を塞がれると同時に部屋に引っ張り込まれて戸が閉まる、という電光石火の早業が繰り広げられ、姫は「室内に入る」という夜這いの第一段階に、目出度く成功致しました。

「…っこ…こんばん、は?」
「ああ。確かにまだ『おはよう』じゃ無ぇな。」

姫を引っ張り込んで椅子に座らせ、その前で腕を組んで仁王立ちになったサクナは、不機嫌そうに言いました。
端から見たら恋人の訪問を受けた婚約者と言うよりも、夜中に忍び込んできた賊を捉えた夜警の様です。

「お前、明日誕生日だからって、俺の誘いを断ったろ。なんで夜中にうろついてんだ。」
確かに昼間サクナに、夜に部屋に行っても良いかと聞かれました。…が、夜這いに燃えていた姫は、それをきっぱり断ったのでした。

「えーっと…それはですね……ちょっと、夜這いを…」
「はぁ?!」
姫の答えに、サクナはあんぐり口を開けました。
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