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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第3章 初めての夜ば…もとい、「お誕生日」の贈り物

「あー…こういう葡萄が、有んだよな。」
そう言うとサクナは姫の指を、先程したようにするりと撫でました。
「葡萄の中からこうやって触った感じと同じ奴を探して、それで合わせた。」
「………ぶどう………」
スグリ姫はサクナの説明を聞いて、呆気にとられました。
大臣が、家令がサクナを真性の果物馬鹿と称していたと言っていましたが、それがこんな事にまで発揮されるとは、姫は思ってもみませんでした。
「…ほんっと、くだものばかなのねー…」
思わずそう呟いたスグリ姫は、自分の為に不機嫌そうに葡萄を選んでいるサクナの姿を想像して、小さくくすりと笑いました。
「ん?何か言ったか?」
「んーん?…私、その葡萄、食べてみたいわ。」
スグリ姫は、この愛おしい果物馬鹿が選んでくれる自分の指に似ている葡萄はどんなだろう、と、興味が湧きました。
「あれは、この辺には無ぇな。あっちに帰ったら…いや、今年はもう終わりだ。」
美味い葡萄だが穫れる量が少ねぇからな、とサクナは真面目に答えながら、姫を自分の方に引き寄せて、膝の上に座らせました。
「…また来年だな。」
サクナはそう言いながらスグリ姫の指に口づけて、そのままきゅっと手を繋ぎました。
「ええ、来年。…すっごく楽しみ。」
スグリ姫はくふんと笑って、サクナの額に口づけました。
今年は離れていた秋を、来年は一緒に迎えることが出来るのです。
二人は来年の約束をしながら、お互いに微笑み合いました。
「ね…これだけは、ずーっと嵌めてていい?」
指を絡めて繋がれた手を持ち上げて、スグリ姫は聞きました。
「ずっと、ってことは、明日の宴席でもか」
「お祝いの時は、全部着けるわよ?…指輪は、ずっとしてたいの」
姫の言葉を聞いたサクナは、軽く眉を顰めました。
「逆に、良いのか?言い方は悪ぃが、お古だぞ?」
「お古じゃないわよ。大事な人から譲られた、大事なものなんでしょ?」
「…宴席にだって、服に合わせて用意してたのが有るんだろ」
「これが良いの。大事な人から贈られた、とっても大事なものなんだもの。」
姫は、本当はいつでも全部身に着けたいくらい、と思っていました。
ではありますが、指輪以外は普段するには少しばかり華やか過ぎたので、せめて指輪はなるべく長く身に着けていたい、と思ったのです。

