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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第4章 スグリ姫の「お誕生日」

「時によっては、って言いましたけど、今迄で一番辛そうだったのは、あんたがこの前故郷に帰った後ですよ。」
「え?」
言われたことが思いがけなかったのか、サクナはやっとバンシルの方に目を向けました。
「姫様は良い方にも悪い方にも、気持ちが体に出るんです。姫様は嘘が物凄く下手だってこと、知ってますよね?」
「ああ…」
「あれと同じです。大丈夫って口で言っても大丈夫じゃない時は、月のものとは関係なくても、時々調子を崩します。」
姫が嘘を吐けないと言うのは、サクナも色々な場面で感じていました。
ですが、その真っ直ぐさが体に影響する事があるとは、想像しても居ませんでした。
自分の不在が姫をそんなに辛くさせたという事でサクナの胸は痛みましたが、同時に姫を大事にしたい、愛しい気持ちが込み上げました。
「幸か不幸か、あんたと婚約してから今まで、姫様に月のものが来たのは、あんたの居ない時だけです。でも、これからはそうは行きませんよ。長年、一緒に居ることになるんでしょうから。」
バンシルはそう言って腰に手を当てて、サクナのことを睨みました。
「それもこれもひっくるめて、くれぐれも、宜しくお願いしときます。私の唯一の乳兄弟を遠くに攫ってくんですから、しっかりしないと許しませんよ。 」
「…バンシル、その事なんだが、」
赤くなったり青くなったりした末に、すっかり顔色が戻ったサクナが、口を開こうとした時。
「ただいまっ!」
扉が軽やかに開きました。
「お帰りなさいませ、姫様」
「…お帰り、スグリ。」
先程の涙はどこへやら、弾むように楽しげに、スグリ姫が戻ってきました。

