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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第1章 熱の明くる日
「ちょ…ちょっとおおお!?!?何言ってんのぉおお!?」

噛み合わない台詞の後、サクナは寝台に突然突っ伏し、スグリ姫は手近にあった枕で、サクナをばふばふ叩きました。
二人の行動は正反対でしたが、二人とも顔から耳から首に至るまで、真っ赤になっているのは同じでした。

「…いや…」
「お兄さんが、お兄さんに、そんなことっ、有る訳無いじゃないーー!!」
「や…お前この前、そこ言わなかったろ…」
枕を握り締めたスグリ姫は、そんな風に思われていた恥ずかしさと情けなさで、すっかり涙目になっておりました。

「言わな…言わなくっても、そんなの、分かるでしょっ!?」
「分かるかよ…」
叩かれるに任せていたサクナでしたが、とうとう突っ伏したまま顔だけ姫の方に向け、姫をじろっと睨みました。

「この前のお前の話の登場人物、お前とバンシルの兄貴だけだったぞ…」
「……え??」
「あれ聞きゃ誰でも兄貴だって思うぞ…」
「…そう?…そう、だった…っけ?」
私またうっかりした?と姫は首を傾げましたが、サクナは寝台に転がって顔の上に腕を乗せ、はぁあああと溜息を吐きました。

「…熱よりそっちのが、よっぽど堪えた…」
「え、なんで?」
「ああ?『なんで』だぁ?!」
サクナは急にがばりと起き上がりました。

「自分の恋人の!こんな場所に!他の野郎に!こんなことされて!平気な奴が居るかってんだよ!!」
「んぇええええええっ!?」
「…何驚いてんだ。」
スグリ姫が突然、目を零れ落ちんばかりに見開いて驚いたので、サクナは逆に仏頂面になりました。

「いま、こっ…こいびとっ…こいびとって、言った?!」
「あぁ?」
「私たちっ婚約者よねっ…こいびとっ!?」
「別に、婚約者と恋人は矛盾しねぇだろ。」
「こいびと…こいっ…」
「何だよ」
何か不満か、と思って姫を見てみると、今度は姫が突然寝台の枕の上に突っ伏しました。

「何だ、どうした!?」
「…こいびと…っ」
「ああ、そうだろ」
「はじめてっ…」
「は?」
姫は顔だけ枕から上げると、サクナの方を見て言いました。

「婚約者はたくさん居たけど…恋人はっ、初めてっ…」
そう言った姫を見てサクナは一瞬固まり、それからがっくり項垂れました。

「…おっ前…なんって顔してんだ…」
「へ?」
「…分かった。」
そう言うとスグリ姫の恋人は、項垂れから立ち直りました。
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