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流されカノジョ
第2章 隣の一軒家に住む受験生



「真央くんは今帰り?遅いね?」

遅いから家まで送ります、と言った真央と一緒に歩き始めた彩は尋ねた。

「そうです、塾に通いはじめたんです…僕受験生なんで」

進学校の制服を纏う姿で真央は嫌そうに呟いた。

「真央くんも受験生だったかぁ…大変だねぇ」

「も?彩さんの知り合いも受験生なんですか?」

彩に尋ねたら、先程まで深雪と飲んでいた事や、そこで喋った事を話せば「彩さんは相変わらず意思が弱いんですね」と足を止めた。

頭一つ分背の高い真央は鋭い瞳で彩を見下ろし、その視線につられて立ち止まった彩は年下の迫力に負けてしまう。

「意思が弱いって、そう言うつもりじゃないんだよ。
ただ、その、嫌だって思わないって言うか…直感で大丈夫!って判断しちゃうの」

手を振って否定した彩の両肩をガシッと掴めば驚いたように自分の方を向いて、すぐに視線を逸らされた。

「じゃあ僕に流されてください、頭使ってヘトヘトです。
彩さんに癒されたいです」

そう言うや否や掴んだ肩ごと彩を抱きしめた。

「ま、真央くん…?」

目の前から漂うワイシャツの柔軟剤の柔らかな匂いを感じながら
ハグで人は癒されるんだよ。と過去の男達に言われた事を考え巡らせ、振り払う気がない腕は真央の背中にそっと回した。

だけどそこは道の往来で、帰路を目指して通りがかったサラリーマンがん゛んっと咳払いをした。

「ごめんなさい!こんな道の真ん中で!」

しゅん、と項垂れた姿は年相応で、可愛いと思った彩は首を振って右手を差し出した。

「大丈夫だから、ほら、帰ろ?」

その手を握った真央は彩には見えてない頭上でフッと笑った。



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