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流されカノジョ
第3章 ワンナイトふろむ3B
「ここの処理研修でやったよね?
どうして間違えたまま提出したの?」
厳しい上司の声と共に黄色の付箋がついた書類が彩のデスクに置かれた。
その書類は不備があるまま処理をし、確認印に川合の判が捺印され彩自身も見覚えがあった。
(あの日は石山さんと関係が終わって判子を押すだけでロクに確認もせず腑抜けた仕事をしてた日だ…!)
「申し訳ありません!」
立ち上がって頭を深く下げる、その頭上で上司は深くため息をついて言い放つ。
「謝罪はいいけど、確認印を押すのを作業化しないで欲しいの。
この確認印を信じて会社が動いてるから、次はしないように気をつけて」
「かしこまりました、以後気をつけます!」
上司の目を見て誠意を見せる彼女の姿に2度と同じミスは起こさないと思った上司は自分のデスクへ戻り腰を下ろした。
今日は怒られる日だと彩は心の中でため息をついた。
朝から通勤に使ってるバスで知らない老人によくわからないまま八つ当たり半分で怒られたことを思い出してしまう。
こんな日はお酒を飲んで人肌に縋りたい…。
そう思った彩は午後から仕事に集中して、ついでに明日に回そうとした仕事に手をつけて退社したのは夜8時前だった。
お気に入りのバーに行って店員さんに話を聞いてもらおうとビル街を抜けて歓楽街へと足を進めた。
大通りに出ると路上ライブをしている若者がいた。
ちょっと癖のある甘めの声とそれにハーモニーした低めの声。
ギターとベースの2人だけだが、2人とも顔が整っていて歌よりも顔や声をメインに聞いてるであろう女の子達が群がっている。
「バンドマンかぁ…」
立ち止まって聞くわけでもなかったが、視線を奪われながら彩はバーへと向かった。