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3年目のプロポーズ
第1章 3年目のプロポーズ
視界がぐるんと回り、気付いたときには、美樹はソファーに押し倒されていた。
腕は抑え込まれ、ジタバタともがいても無駄だった。
「ねぇ、本当に?」
優馬の顔がぐっと近づく。
「本当に僕が信じられないの?」
優馬の瞳は、真剣を通り越して怒りに燃えていた。彼が怒るのを、美樹はこのとき初めて見た。
何しろ、二人は喧嘩という喧嘩を一度もしたことがない。それはとりわけ、優馬がいつも上手く場をコントロールしてくれるからだ。美樹が感情的に言葉をぶつけても、決して言い返してこない。彼は美樹が落ち着くまで何も言わず、ひたすら寄り添ってくれる。
「僕のこと……嫌いになった?」
絞り出したようなか細い声。美樹は胸が苦しくなった。
「き、らいじゃないよ……」
嫌いなわけ、ない。誰よりも好きだ。
「でも、やっぱり無理があったんだよ……」
今までのことを思い返す────
二人が恋人になったことが会社で広まったとき、散々誹謗中傷を浴びせられた。それは、女の醜い嫉妬によるものだったが、決して嘘偽りではないのだ。
“あんたじゃふさわしくない”
“美女と野獣の逆バージョン”
“釣り合ってない。優馬くんがかわいそう”
「私……これから優馬と付き合っていく自信、なくなっちゃった」
人当たりが良く、優秀で、恋人としても完璧な彼────
少し離れたところから眺めているくらいが丁度よかったんだ。自分が、欲張りすぎたんだ。