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3年目のプロポーズ
第1章 3年目のプロポーズ
優馬は背を向けて、突っ立っている。
いやな空気だ。
美樹は起き上がり、乱れかけた服を直した。
勢いで別れを切り出してしまった。でも、間違ってはいないはずだ。
これから、優馬は彼にふさわしい素敵な女性を見つける。そして美樹は美樹で、肩肘はらずに気楽にいられる自分にちょうどいい相手を選ぶ。それが互いにとって一番いいはずだ。
美樹は、必死に自分にそう言い聞かせた。
「実は……今日は君に、プレゼントがあるんだ」
「え……?」
「今日の為に、用意したんだ」
もしかして────婚約指輪?
途端に、先程までの自分の行動を後悔した。あともう少し耐えれば、結婚まで漕ぎ着けたのだろうか。
その一方で、頭の中でそんなことを考える自分はなんと安い女なんだろう、とも思った。美樹の心の中は一瞬で嫌悪感でいっぱいになった。
「もう……それだけでいいよ。
もらってくれれば、僕は十分だからさ」
だから────と言うと、優馬は振り返った。
「もらって、くれるかい?」
優馬は寂しげに目を細め、笑っていた。
美樹は、無意識の内に、頷いてしまっていた。