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3年目のプロポーズ
第1章 3年目のプロポーズ
「……そうだね、おめでたいことだと思う」
美樹は優馬の横顔をちらりと見た。優馬は真っ直ぐ、テレビに目をやったまま、静かなトーンで話し始めた。
「でも、僕は……結婚よりもっと、大切なことがあると思う」
そして彼の返事に、美樹は落胆した。やはり彼に、結婚願望はないのだろうか。
「大切なこと……、って?」
「当人同士の気持ちだよ」
優馬は持っていたフォークを置いて、横に座る美樹に向き直った。
「だって、結婚しても愛する気持ちがなくなってしまえば、夫婦関係なんて足枷にしかならないでしょ?」
“足枷(あしかせ)”
彼の口から出てきたその言葉に、美樹は愕然とした。
こんなに結婚に対する価値観が違うなんて、あぁ──今にも目眩を起こしそうだ。
「でも逆を言うと──お互い気持ちがあれば、例え結婚しなくても、幸せになれると思わない?」
「そ、うだね……」
満足そうに話す優馬に、美樹はうまく笑いかけられなかった。