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SOS
第2章 虚空と現実
電話を終えた木崎は、携帯電話片手に呆けていた────
まさか、こんな簡単に────
『お前の願いを言え』
契約成立のあと、悪魔はこう命令した。
『悪魔は……人の心が読めるんですよね? じゃあ俺がわざわざ言わなくったって……』
『掟がある。悪魔は必ず、人間の口から告げられた願いを叶える決まりなんだ』
木崎はごくりと唾を飲んだ。
『む、昔からの俺の……夢、叶えほしい』
『……』
『俺の撮った写真で、沢山の人を感動させたい……』
お願いします、と木崎は頭を下げた。
『承知した』
悪魔は木崎の額に手を当てた。その手は氷のように冷たかった。
目を瞑れ、と言われ、木崎は言う通りに瞼を下ろす。
すると途端に眠気に襲われ────
薄れゆく意識の中で、最後に悪魔はこう告げた。
『次に目が覚めた時、お前を取り巻く現実はそれまでとは確実に違うものになっているだろう』