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SOS
第3章 無限と有限

「……なぁ、悪魔」

木崎にはひとつ、気になることがあった。

「何だ……」

「お前は、確定的な未来も叶えられるのか?」

木崎は立ち止まり、空に浮く悪魔を見上げた。悪魔の鮮やかな血の赤の瞳だけが、夜の闇の中でもくっきりと浮かんで見える。

「例えば、そうだな……
“来月のバレンタインデーに、200個のチョコをもらう”という現実を叶えてほしい、とか」

「……叶えることは可能だ。ただし、100%実現するとは約束できない」

自然災害や交通事故といった、偶然的な事象が発生した場合、実現不可能になってしまうこともあるらしい。だが、それは本当にごく稀なケースであって、ほとんどは現実化するという。

悪魔はそう説明した。

「そうか……それなら、」

木崎が小さく頷く。そして彼の思考を読み取った悪魔が、先にその単語を口にした。

「……寿命か」

「あぁ、死ぬ年齢を決めておくのも悪くないかと思って」
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