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SOS
第3章 無限と有限
「あまり長生きするのも苦痛だからな……」
本日、木崎がゲストコメンテーターとして収録に参加したのは、とあるドキュメント番組だった。テーマは、日本の超高齢社会問題について。
100歳を超えた老人が、子供より長生きするという現実。
しかもその老人も認知症を発症し、誰かが面倒を見なければ生きていけないという。
「健康的に長寿なのは嬉しいことだけど、誰かに排泄処理をしてもらって生きていくなんて、まっぴらごめんだよ」
「……」
「せめて本人がその現実を理解していれば、自殺でもなんでもすればいい。だけど認知症じゃあどうしようもない」
本人がその残酷な現実に気付けないのは、周りの人間にとっては地獄以外の何物でもない。
現在の日本人の平均寿命は83歳。女性にいたっては80代後半らしい。
「そうだな……80ぐらいにしておくか」
木崎のそのあまりに軽はずみな言葉に、悪魔は思わずくくっと笑いを溢した。
「自分の人生の終わりだぞ……? そんな軽々しく決めて後悔しないのか?」
歩を進めていた木崎の足が止まる。悪魔のその言葉に、木崎は目を丸くした。
「珍しいな……お前が俺に忠告するなんて」
「あとで取り消してくれ、なんて文句を突きつけられても面倒だからな……」
取り消す、ということはまた一つ願いを消化することだ。
だから願いは慎重に決めろ、と今更ながらに悪魔は言った。