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SOS
第1章 邂逅と訣別
「……」
もう、無理なのだろうか────
木崎は深いため息をついた。
彼は近い将来自分が死ぬことに絶望したのではなかった。いや、正確に言えば死ぬのは怖い。怖くてたまらない。
しかしそれ以上に────自分の夢が叶えられないことに、木崎はひどくショックを受けていた。
「……っ、」
木崎は、そっとカメラに触れた。
指先から伝わる冷たさが何とも心地良い。
彼の夢────それは、自分の撮った写真で多くの人を感動させること。
ありがちで下らない夢だと、人は嘲笑うだろう。
しかし、木崎はずっとそれを目標にして今まで生きてきた。自分の人生全てを懸けた。いい写真を撮ること、ただそれだけのために────
それでもまだ自分は、夢を叶えていない。
「なのに死ぬのか……俺は」
ポタポタと木崎の目から溢れる涙が、絨毯に染みを作る。夢を叶えられない────その無念に、彼の心は張り裂けそうだった。