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SOS
第1章 邂逅と訣別
家に帰ると部屋で一人、木崎は悲しみのどん底に暮れていた。
軽い気持ちで受けた健康診断でまさかこんなことになるなんて────
「……はぁ」
どうしていつも、自分の人生はこうも不運なことばかり起こるんだろうか。
小学生の頃は、いじめを機に転校したが、転校先ではさらに酷いいじめに遭った。
高校受験では、頭は良かったものの、あと1点、点数が足りず、定員割れの偏差値の低い高校へ入学。
大学生のときには、住んでいたアパートが火事になり私物を全て失った。
そして今も────
部屋の隅にぽつんと置かれた、大きなカメラ。
木崎は、昔から写真を撮るのが好きだった。大学卒業後、彼は写真家として活動し始めた。
しかし無名の写真家に金が入るほど、プロの世界は甘いものではなく、コンテストに応募しても落選ばかり。
気付けば、35歳。
しかもよりによって、今日が誕生日だなんて。