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告白の向こう側
第1章 告白の向こう側

「……なぁ、雅」

「なんでしょう」

「人を好きになるって、何なんだろうな……」

ぽつりと呟いた彼の言葉に、私はすごく重みを感じました。


私もよく、考えます。

なぜ、人は人を好きになるんだろう。

なぜ、私はよりによって社長が好きなんだろう。

仕事の相棒として信頼されている身ですから、告白したくてもできません。

それに、たとえ彼に想いを告げてもうまく行かないことは目に見えています。

今までの恋愛────勇気を振り絞って告白しても、全て、断られた。それどころか、その後距離をとられてしまうこともありました。

それでも私は告白するという選択をするほど、私のメンタルは強くないので

小心者らしく、こうしてひっそり想い続けるだけ────

「俺はとことん駄目な奴だ……」

「……そんなことありませんよ。社長はとても魅力的ですから、またきっといいお相手が────」

「違う」

社長は勢い良く立ち上がりました。

「俺は……っ、ほんとうに駄目なんだ」




「心のどこかで────まだ、諦めきれないでいる」



その時────私は彼の中に、想い人がいることに気付いてしまいました。

昔の恋人なのか、ただの片想いなのか────確かなことは分かりませんが

彼は、心のどこかで────必死に忘れようともがいているんでしょう。

だから婚約の誘いも、乗り気ではなくとも受ける。しかし結局最後には、断ってしまう。


社長は、自分の発言に気がついたのか────はっとして、自分の口元を押さえました。

「悪い……っ、今のは忘れてくれ」

私はただ頷くだけ────ですが、そのとき心の中では号泣していましたよ。
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