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「ネガティブ」のバイブル
第1章 エビマヨパン
そう言った時、俺たち三人の横を、スッ、と誰かが追い抜いて歩いていった。
「……あ」
天原 翔―アマハラ ショウ―。クラスメイトの一人。前も横も後ろも、男子にしては髪が長く、黒ぶち眼鏡を掛けている。寡黙で、クラスでもあまり目立たない。まさしく“地味”の典型のようなヤツだ。
「俺はいいと思うけどな~、ショウって!俺正之で二文字だから、一文字に憧れるしっ」
聞こえよがしに、友人の一人がでけー声で言った。もう一人もすかさず、うんうん、とうなずく。
天原の様子に気をとられていた俺は、「あー…そうだな…」と小さな声で言うだけだった。天原の背中を見送ると、友人たちは一斉にこっちを見る。
「だから止めたのに。あーあ、絶対嫌われたな」
友人の一人が言う。一応俺も、やっちまったなとは思う。
「やべ…まいっか…」
まいっか。なんか通りすぎて行くとき、“に”…?とかなんとかって聞こえた気がしたけど、まいっか…。
「“やべ”って思ってから“まいっか”ってなるの早すぎね?」
正之じゃない方の友人がそう言って笑い、俺もつられて笑っていた。
結局、この時点での俺はまだ、あまり気にとめていなかった。天原の存在にも、自分のしたことにも。
「……あ」
天原 翔―アマハラ ショウ―。クラスメイトの一人。前も横も後ろも、男子にしては髪が長く、黒ぶち眼鏡を掛けている。寡黙で、クラスでもあまり目立たない。まさしく“地味”の典型のようなヤツだ。
「俺はいいと思うけどな~、ショウって!俺正之で二文字だから、一文字に憧れるしっ」
聞こえよがしに、友人の一人がでけー声で言った。もう一人もすかさず、うんうん、とうなずく。
天原の様子に気をとられていた俺は、「あー…そうだな…」と小さな声で言うだけだった。天原の背中を見送ると、友人たちは一斉にこっちを見る。
「だから止めたのに。あーあ、絶対嫌われたな」
友人の一人が言う。一応俺も、やっちまったなとは思う。
「やべ…まいっか…」
まいっか。なんか通りすぎて行くとき、“に”…?とかなんとかって聞こえた気がしたけど、まいっか…。
「“やべ”って思ってから“まいっか”ってなるの早すぎね?」
正之じゃない方の友人がそう言って笑い、俺もつられて笑っていた。
結局、この時点での俺はまだ、あまり気にとめていなかった。天原の存在にも、自分のしたことにも。