この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
降っても照っても曇っても(くすくす姫後日談・その4.5)
第2章 白薔薇と赤薔薇
「腹が痛ぇのか?」
「痛い…けど、お腹じゃなくて、指…」
「指?」
見せてみろ、と言われて右の人差し指を出すと、赤くなってるな、と眉を顰められました。
「薬貰ってくるか」
「ううん、引き出しに入ってるわ。木工でよく痛めるから」
「どこだ」
左手で指差すと、サクナは姫を立ち上がらせて長椅子に座らせた後、薬を取ってくれました。
「手ぇ出せ」
「大丈夫、自分でする」
サクナは薬を受け取ろうと差し出した姫の手を止めて、瓶の蓋を開けました。

「自分じゃ塗り辛ぇだろ。大人しく言う事聞いとけ」
「…ん」
ごめんなさい、と右手を出すと、ひんやりする軟膏が人差し指に丁寧に塗られました。
サクナは薬を塗り終えて、薬指に嵌っている指輪に口づけてから、これで良いか、と右手を返してくれました。
「ありがとう」
「綺麗な手なんだ、気をつけろ」
残った軟膏を拭った後の手で髪を撫でられて、姫はまたうっかりしちゃった、と反省しました。
サクナが入って来たからと言って、あんなに焦って戸を閉めなくとも良かったのです。

「…あら?」
神妙に撫でられながら、姫は何かの匂いを感じて、鼻をくんくんしました。
軟膏の匂いはもちろんしていましたが、それに混じって甘い香りがするような気がしたのです。
「ああ…腹減ってねぇか?何も食ってねぇだろ」
部屋に入ったとき姫が声を上げたので、一旦そこに置いたのでしょう。
サクナは部屋の入り口に近い棚の所に歩いて行って、お茶一式と、布をかけた皿を持って戻って来ました。

「バンシルがお前に何か食えそうなものを持って行くって言ってたから、頼み込んで手伝わせて貰ってた」
皿の上には、丸くて薄い半割りの軽焼きパンの上に、薄紅色とクリーム色の薔薇を三つずつ乗せた物が、ちんまりと盛り付けてありました。
「これ、前に…」
「ああ。今回は二色だぞ。この前は、赤いリンゴはまだ手に入らなかったからな」
「嬉しい…」
スグリ姫は果物細工を最初に教わった時のことを思い出していました。
あの時は、今のような未来が来るとは、ちっとも思っていませんでした。
けれど、あの時何気なく言ったことを、サクナは憶えていてくれて、こうして作ってみせてくれたのです。
スグリ姫は紅白の薔薇を眺めながら、胸の中がほんわり暖かくなりました。
/15ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ