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降っても照っても曇っても(くすくす姫後日談・その4.5)
第2章 白薔薇と赤薔薇
「ありがとう!すごく綺麗ね。それに、美味しそう!」
姫が喜ぶと、サクナはにやっと笑いました。
「今度はちゃんと作ったからな、食ってもいいぞ」
以前作ったときも、姫は食べてみたかったのですが、練習のためこねくり回したからと、持ち帰られてしまいました。
お前の腹を壊させる訳にいかないから俺が食う、と言われて、食べさせて貰えなかったのです。
「その手で食えるか?」
姫が銀器を持つと、サクナがお茶を淹れながら、心配そうに言いました。
「大丈夫。そんなに痛くないから」
どれを最初に食べようか迷った姫は、この前作ったのと同じ、白薔薇から食べることに致しました。

「…おいしい…!」
クリーム色の薔薇を口に運ぶと、口の中でさらり花弁がほどけて、甘酸っぱくみずみずしい果汁とシロップが爽やかに口の中を満たしました。
果肉も固くもなく、ぐしゃっと崩れてしまうほど柔らかすぎることも無く、リンゴらしい快い歯ざわりを残したぎりぎりの柔らかさで煮られています。
噛んでいると最後には、どこも均一に口の中で消えて行くのが不思議でした。

「食えそうか?無理すんなよ」
「ううん、無理してない…食べない方が無理かも」
「そうか。じゃあ、食えるだけ食え」
「うん」
姫はお茶を一口飲んでから、今度は赤薔薇を口に入れました。
「…あ。赤いのは、ちょっとだけ甘い?」
「少しな。両方同じじゃ、つまんねぇだろ」
「同じでもつまらなくないけど、違うと倍美味しく感じるわ!…パンも、美味しそう」
「そっちはバンシルと厨房作だ」
「パンも、リンゴのシロップがしみてて、すごく美味しい…!」
姫はお皿の上の物を、目でも舌でも、ゆっくり味わって食べました。
「全部食べられちゃったわ。ご馳走様」
「苦しくねえか?」
「大丈夫。ちょうどお腹いっぱいよ」
姫はすっかり満たされた気持ちでお茶を飲み、ふうっと息を吐きました。
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