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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第10章 面接と候補者
紅茶のカップを覗いていた姫は、鼻の奥がつんとして来ました。
「姫様?どうかなさいました?」
「…ううん。湯気が、ちょっと」
姫はカップを持ったまま、何度か瞬きをしました。
「ご馳走様。面接の続きをしちゃいましょ」
「姫様」
「…なあに」
バンシルはお茶を片付けながら、姫に向かってうっすら微笑みました。
「くれぐれも、ご無理はなさらないで下さいね」



「お帰りなさいませ」
「何でお前らだけなんだ」
帰宅をクロウとバンシルに出迎えられて、サクナは不機嫌そうに眉を顰めました。

「申し訳ございませんね。ご当主様お目当てのお方は、今お部屋から出られませんもので」
「面接で何か有ったのか?」
「いえ、面接の首尾はなかなかでしたよ。全員姫様の虜になってました」
「…は?虜だぁ?」
思わぬ言葉に面食らっているサクナに、バンシルは言いました。

「実際は、面接って言えるような面接じゃなかったかもしれませんけどね。姫様と話してる内に全員の被ってた猫がすっかり脱げて、姫様は楽しそうでしたし候補者達は最終的には大喜びして感激してました」
「…何があったら、そうなるんだよ…」
「まあ、なかなかの見物でしたよ」

そう言ってバンシルは、三人の候補者それぞれが面接でしでかした事を話し始めました。
その報告を聞いていたサクナの眉は、話が進んで行くにつれて、どんどん顰められました。
「…おい…そいつら、本当に大丈夫なのか…」
聞いていた話が終わり、サクナは頭を抱えました。

「大丈夫ですよ。最終的には全員姫様に心酔してましたから」
「いや、そりゃあ…むしろ、そこが心配なんじゃねぇのか…?」
「大丈夫です。私が保証します」
「保障されても、なぁ…」
バンシルの話によると、三人は方向性は全く違いますが、かなり強烈な癖の有る侍女候補たちだった様でした。

「大丈夫ですって、普段は全員普通ですから。現に一次面接では普通でしたでしょ?」
「そりゃ、まあ…」
「もしかしたら姫様が絡むと普通じゃなくなるのかもしれませんけど、そうだとしても最初が一番強烈でしょうからね。今後は多分暴走したって大したことありませんって。しかも仕事に関しては、全員普通じゃなくて、かなり優秀です」
「あー…」
サクナはまだ何か言いたそうでしたが、バンシルがそこまで言うならと、思い切ることに致しました。
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