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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第10章 面接と候補者
「…なんか、やな感じ…」
「済まね…っ…ちょっ…」
姫はサクナがなかなか笑い止まない様子を見て膨れ、ますます布団に籠もりました。
「…おーい、出て来ーい。俺が悪かった」
「やだっ」
サクナは姫が臍を曲げたためにやっとの事で笑いをこらえ、寝台に腰掛けてぽんぽん軽く小山を叩きました。

「今日の面接の様子、バンシルに聞いたぞ。色々ご苦労だったな」
「…っ…」
「なかなか個性的な奴等らしいな。仕事は出来そうだってから、問題無ぇけどな」
「……」
「どうした?」
「…どうもしない…」
姫は、侍女候補のうち誰が選ばれるのかを聞くのも憂鬱でしたし、侍女が決まるという事はバンシルと離れる日が段々近付いているという事だと思い知るのも憂鬱でした。
そんな風に気が塞いでしまう自分を持て余していると言う事もまた、今姫が布団に籠もっている原因のひとつでした。

「…そうか。」
小山に籠もったスグリ姫は、短い返事がやけに優しかったので、ぽんぽん規則的に伝わってくる振動にじんわり泣きそうにな…りかけた、のですが。

「どうもしねぇなら、昨日の約束を果たして貰うかな」
「え、約束?約束なんて、した?」
サクナが小山をぽんぽんしながらのんびりした声で言ったので、姫の涙はどこか遠くへ吹っ飛びました。

「したよな?お前、昨日『明日なら良いけど今日はダメ、絶対ダメ!』って言ってたぞ?」
「…へっ?」
「ってことは、昨日はダメだが今日なら良いって事だよな?」
「そ、それはっ!」
姫は昨日サクナがあっさり引き下がった理由が、今になってようやく腑に落ちました。

「一日猶予が有って却って良かった。色々準備も出来たしな」
「準備!?何の準備っ」
「風呂に決まってるだろ」
「えぇっ!?ふろって、またおふろっ?!」
「そりゃ、せっかく作ったんだし、使わねぇとな。面接が終わった褒美も兼ねて風呂入るぞ」
「ご褒美っ?!私、ご褒美貰うようなことした?」
そもそもお風呂はご褒美になるの?と姫は思いましたが、それを聞く余裕は有りませんでした。

「しただろ。侍女は全員採用になったぞ、お前の面接のお陰だろ」
「え!!ほんとっ!?」
姫は憂鬱の種のうちの一つに対する良い報せを聞いて、がばっと布団を跳ね除けました。
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