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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第11章 休息と責任
「スグリ…」
そんな姫を見て口元を緩めたサクナを見上げて、姫はほんの少し悲しげに眉を寄せました。
「でも私、クロウさんのお話も、時々聞きたいの…だめ?」
「うっ…」
サクナは何故か、胸を押さえて呻きました。
「ダメ…じゃ、ねぇ…」
「ほんと!?嬉しい!サクナ大好き!!ありがとう!!」
頬を染めて目を輝かせ、にこにこと笑う姫の頭を不機嫌そうに撫でている当主を見て、クロウはやれやれと思いました。
(これは…絵に描いたような「骨抜き」のお手本ですな…)
サクナにちらりと睨まれたクロウは、椅子から立ち上がりました。
(まあ、これはこれで、仕事の進みは却って速くなっているという…不思議なことに)
サクナがテーブルに放った書類を拾って目を通すと、クロウはサクナに軽く頭を下げました。
(…さっさと終わらせてお二人でゆっくり、という事でしょうか…恋は偉大ですな)
最初は普通に頭を撫でていたサクナは、今や姫を抱き込むようにして、撫でながら時折髪に口づけて、ついでに器用にもクロウをじろりと睨みました。
(仕事の為にも成ることですし、少しだけ時間を差し上げましょう。…但し、)
「失礼して、お茶を差し替えて参ります」
クロウはこちらを見ていない二人にお辞儀をすると、書類と茶器を持って扉に向かいました。
扉を開けて閉める瞬間に当主が姫に上を向かせているのが見えたような気がしましたが、その後何があったのかは、クロウの知るべき所ではありませんでした。
…けれど。
「クロウ様!」
クロウが部屋を出た所、玄関の方から何やら騒ぎが聞こえて来ました。何事かと思っていると、使用人が一人こちらにやって来ました。
「何か?」
「ローゼル様がお越しです」
「何?」
「ローゼル様!お待ち下さい」
「お嬢様!」
「ごきげんよう、クロウ」
クロウが事態を飲み込まない内に、ローゼルがこの家の別の使用人と彼女のお付きのビスカスを引き連れて…と言うか、彼等が止めるのを振り切って、ここまで強行突破して来た様でした。
「いらっしゃいませ、ローゼル様。当主とお約束がお有りでしたかな?何も聞いては居りませんが」
クロウは片付けるように言い含めながら使用人に茶器を渡し、ローゼルの正面に向き直りました。
「サクナ様と約束?そんな単純な用事なんかじゃ無くってよ!」
ローゼルは柳眉を逆立てて、クロウの言葉を否定しました。
そんな姫を見て口元を緩めたサクナを見上げて、姫はほんの少し悲しげに眉を寄せました。
「でも私、クロウさんのお話も、時々聞きたいの…だめ?」
「うっ…」
サクナは何故か、胸を押さえて呻きました。
「ダメ…じゃ、ねぇ…」
「ほんと!?嬉しい!サクナ大好き!!ありがとう!!」
頬を染めて目を輝かせ、にこにこと笑う姫の頭を不機嫌そうに撫でている当主を見て、クロウはやれやれと思いました。
(これは…絵に描いたような「骨抜き」のお手本ですな…)
サクナにちらりと睨まれたクロウは、椅子から立ち上がりました。
(まあ、これはこれで、仕事の進みは却って速くなっているという…不思議なことに)
サクナがテーブルに放った書類を拾って目を通すと、クロウはサクナに軽く頭を下げました。
(…さっさと終わらせてお二人でゆっくり、という事でしょうか…恋は偉大ですな)
最初は普通に頭を撫でていたサクナは、今や姫を抱き込むようにして、撫でながら時折髪に口づけて、ついでに器用にもクロウをじろりと睨みました。
(仕事の為にも成ることですし、少しだけ時間を差し上げましょう。…但し、)
「失礼して、お茶を差し替えて参ります」
クロウはこちらを見ていない二人にお辞儀をすると、書類と茶器を持って扉に向かいました。
扉を開けて閉める瞬間に当主が姫に上を向かせているのが見えたような気がしましたが、その後何があったのかは、クロウの知るべき所ではありませんでした。
…けれど。
「クロウ様!」
クロウが部屋を出た所、玄関の方から何やら騒ぎが聞こえて来ました。何事かと思っていると、使用人が一人こちらにやって来ました。
「何か?」
「ローゼル様がお越しです」
「何?」
「ローゼル様!お待ち下さい」
「お嬢様!」
「ごきげんよう、クロウ」
クロウが事態を飲み込まない内に、ローゼルがこの家の別の使用人と彼女のお付きのビスカスを引き連れて…と言うか、彼等が止めるのを振り切って、ここまで強行突破して来た様でした。
「いらっしゃいませ、ローゼル様。当主とお約束がお有りでしたかな?何も聞いては居りませんが」
クロウは片付けるように言い含めながら使用人に茶器を渡し、ローゼルの正面に向き直りました。
「サクナ様と約束?そんな単純な用事なんかじゃ無くってよ!」
ローゼルは柳眉を逆立てて、クロウの言葉を否定しました。