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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第11章 休息と責任
「サクナ様とも話はさせて頂きたいけれど、今私が直接用が有るのは、あの子よ。あの子の為を思うなら今すぐあの子に会わせて頂戴」
「…あの子?」
ローゼルにまくし立てられ、クロウはほんの少し眉を顰めました。
その様子を見ていたビスカスが、慌てて口添え致しました。
「大変不躾で申し訳ございやせん!お嬢様は、スグリ姫様を訪ねていらしたんで」
「成る程、スグリ様をお訪ねと…。何のご用ですかな?もっとも、ご用件を承っても」
クロウはそこで言葉を切ると、先程自分が出て来たばかりの執務室に通じる扉をちらりと眺めました。
「…お会い頂けるかどうかは、分かりかねますが」
「こんな時に、何を悠長な事を言っているの!」
クロウの落ち着き払った言葉と変わらぬ表情は、ローゼルを激高させました。
「はて…こんな時、とは」
「今日の午後、ここに茶会の招待の使者が来るわ」
首を捻るクロウに、ローゼルは吐き捨てました。
「何ですと…」
「分かって頂けたかしら?とりあえずあの子と話させて頂くわ。居ないなら仕方ないからサクナ様だけでも良いけど…サクナ様は居らっしゃるのよね?」
「ローゼル様、少々お待ちを」
クロウが止めるのを全く聞かず、ばたんと執務室の扉を開けたローゼルは、開けるや否や無言無表情になって、ばんっと扉を閉めました。
「…お嬢様?どうなさったんで」
ビスカスはローゼルに聞きましたが、ローゼルは固まった表情のまま、ビスカスを完全に無視しました。
「…クロウ!!!!」
「何で御座いましょう」
ローゼルはクロウの方につかつかと歩いて行くと、真っ赤な顔でクロウを怒鳴り付けました。クロウの方は平然と、ローゼルに用件を聞き返しました。
「どうして止めなかったのっ!?」
「いいえ、私はお止め致しました。ローゼル様の事も、当主の事も」
「は?どういう」
「…お前等…」
ビスカスが訝しげに疑問を口にすると同時に、執務室の扉が中から開いて、この世のものとは思えない不機嫌極まりない声がしました。
「ひぃいっ?!サクナ様っ?!」
「…人ん家に先触れも無く押し入るたぁ、どういう了見だ…」
ビスカスの叫びでその場に居た全員が声のする方を見ると、後ろに冬の雷鳴轟く嵐の夜が見えそうな位不機嫌なサクナが、執務室の扉の前に仁王立ちしておりました。それを見た一同の体感温度は、急に天気が崩れる時の様にさあっと下がりました。
「…あの子?」
ローゼルにまくし立てられ、クロウはほんの少し眉を顰めました。
その様子を見ていたビスカスが、慌てて口添え致しました。
「大変不躾で申し訳ございやせん!お嬢様は、スグリ姫様を訪ねていらしたんで」
「成る程、スグリ様をお訪ねと…。何のご用ですかな?もっとも、ご用件を承っても」
クロウはそこで言葉を切ると、先程自分が出て来たばかりの執務室に通じる扉をちらりと眺めました。
「…お会い頂けるかどうかは、分かりかねますが」
「こんな時に、何を悠長な事を言っているの!」
クロウの落ち着き払った言葉と変わらぬ表情は、ローゼルを激高させました。
「はて…こんな時、とは」
「今日の午後、ここに茶会の招待の使者が来るわ」
首を捻るクロウに、ローゼルは吐き捨てました。
「何ですと…」
「分かって頂けたかしら?とりあえずあの子と話させて頂くわ。居ないなら仕方ないからサクナ様だけでも良いけど…サクナ様は居らっしゃるのよね?」
「ローゼル様、少々お待ちを」
クロウが止めるのを全く聞かず、ばたんと執務室の扉を開けたローゼルは、開けるや否や無言無表情になって、ばんっと扉を閉めました。
「…お嬢様?どうなさったんで」
ビスカスはローゼルに聞きましたが、ローゼルは固まった表情のまま、ビスカスを完全に無視しました。
「…クロウ!!!!」
「何で御座いましょう」
ローゼルはクロウの方につかつかと歩いて行くと、真っ赤な顔でクロウを怒鳴り付けました。クロウの方は平然と、ローゼルに用件を聞き返しました。
「どうして止めなかったのっ!?」
「いいえ、私はお止め致しました。ローゼル様の事も、当主の事も」
「は?どういう」
「…お前等…」
ビスカスが訝しげに疑問を口にすると同時に、執務室の扉が中から開いて、この世のものとは思えない不機嫌極まりない声がしました。
「ひぃいっ?!サクナ様っ?!」
「…人ん家に先触れも無く押し入るたぁ、どういう了見だ…」
ビスカスの叫びでその場に居た全員が声のする方を見ると、後ろに冬の雷鳴轟く嵐の夜が見えそうな位不機嫌なサクナが、執務室の扉の前に仁王立ちしておりました。それを見た一同の体感温度は、急に天気が崩れる時の様にさあっと下がりました。