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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第11章 休息と責任
この様な状況であっても、普段のローゼルでしたら、サクナに何かしらの形で応えて居たでしょう。彼女はそれが出来るだけの度胸と聡明さと自尊心と気位の高さを持っておりました。
ですが、今のローゼルは、顔を赤くして口を閉じたまま、サクナを睨んでいるだけでした。先程部屋の扉を不用意に開けてしまったことで、いつもの調子が些か狂ってしまった様でした。
主のローゼルが黙っている以上ビスカスも口を開く訳にはいかず、落ち着かなげに左右のサクナとローゼルを見回しています。
「ローゼル様は、火急の御用でスグリ様を訪ねていらしたそうです」
押し黙ったローゼルに多少の同情と少々の責任を感じたクロウは、不意の来客達に代わって、サクナに訪問の目的を告げました。
「スグリに?お前が?何の用だ?」
意外な目的に毒気を抜かれたサクナは、いつもと変わらぬ程度の不機嫌さに戻って、眉を顰めました。
「…今日の午後、ここに茶会の招待の使者が参りますわ」
「ああ?」
ローゼルが先程クロウに告げたのと同じことを告げると、サクナは目を剥きました。
「おい、何でそんな事になってんだ?!」
「…詳しくは、分からないけれど…あの人が余計な事をお祖母様に吹き込んだ様ですわ」
「は?お前んちの大奥様は、そんなん聞く耳持つような玉じゃ無ぇだろ!」
「…お孫さんが兄、妹と順番に袖にされた相手同士が結婚されるって聞かされちゃあ、ちったぁ興味が湧かれちまっても仕方無ぇんじゃねえでしょうかね」
「ビスカス!」
当て付けじみた言葉にサクナは目を見開き、ローゼルはビスカスを鋭くたしなめました。
「…すいやせん、お嬢様、サクナ様。ですが、事実は事実としてお伝えしねぇと」
「…クソっ…余計なことしかしやがらねぇな、お前んとこの女ぎ…奥方様は」
「お気遣い頂かなくってもよろしくてよ、好きに呼んで下さって」
ローゼルは義母に対する失礼な呼称を、露ほども気に致しませんでした。
「大奥様にゃあ披露目の会で二人一緒に挨拶しときゃあなんとかなると思ってたんだが」
サクナは頭を抱えて、溜め息を吐きました。
「どうなさいます。茶会は男子禁制ですぜ」
「先刻承知だ。だから余計頭が痛ぇんじゃ無ぇか」
サクナは目を閉じて、眉間の当たりに手を当てました。
ですが、今のローゼルは、顔を赤くして口を閉じたまま、サクナを睨んでいるだけでした。先程部屋の扉を不用意に開けてしまったことで、いつもの調子が些か狂ってしまった様でした。
主のローゼルが黙っている以上ビスカスも口を開く訳にはいかず、落ち着かなげに左右のサクナとローゼルを見回しています。
「ローゼル様は、火急の御用でスグリ様を訪ねていらしたそうです」
押し黙ったローゼルに多少の同情と少々の責任を感じたクロウは、不意の来客達に代わって、サクナに訪問の目的を告げました。
「スグリに?お前が?何の用だ?」
意外な目的に毒気を抜かれたサクナは、いつもと変わらぬ程度の不機嫌さに戻って、眉を顰めました。
「…今日の午後、ここに茶会の招待の使者が参りますわ」
「ああ?」
ローゼルが先程クロウに告げたのと同じことを告げると、サクナは目を剥きました。
「おい、何でそんな事になってんだ?!」
「…詳しくは、分からないけれど…あの人が余計な事をお祖母様に吹き込んだ様ですわ」
「は?お前んちの大奥様は、そんなん聞く耳持つような玉じゃ無ぇだろ!」
「…お孫さんが兄、妹と順番に袖にされた相手同士が結婚されるって聞かされちゃあ、ちったぁ興味が湧かれちまっても仕方無ぇんじゃねえでしょうかね」
「ビスカス!」
当て付けじみた言葉にサクナは目を見開き、ローゼルはビスカスを鋭くたしなめました。
「…すいやせん、お嬢様、サクナ様。ですが、事実は事実としてお伝えしねぇと」
「…クソっ…余計なことしかしやがらねぇな、お前んとこの女ぎ…奥方様は」
「お気遣い頂かなくってもよろしくてよ、好きに呼んで下さって」
ローゼルは義母に対する失礼な呼称を、露ほども気に致しませんでした。
「大奥様にゃあ披露目の会で二人一緒に挨拶しときゃあなんとかなると思ってたんだが」
サクナは頭を抱えて、溜め息を吐きました。
「どうなさいます。茶会は男子禁制ですぜ」
「先刻承知だ。だから余計頭が痛ぇんじゃ無ぇか」
サクナは目を閉じて、眉間の当たりに手を当てました。