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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第12章 茶会と果実酒
「…済まねぇな。こればっかりは、どうしてやる事も出来ねえ」
「ううん、ごめんなさい。私が自分で決めたんだから、淋しくなったりしちゃダメだって、分かってるんだけど…」
最初から分かっていた事ですし、何度か話し合ったた事でしたが、何度話しても姫が故郷から遠いこの地に嫁いで来なくてはならないという事実は変えようがありません。そして、ここには誰も連れて来ないというのは、誰も自分の我が儘に付き合わせたくないという、姫の希望でありました。
「構わねぇから、淋しい時は淋しくなってろ。お前をここに来させる事自体は変えようがねぇが、他に出来る事が有れば何でも言え」
「ありがと…」
目を閉じて抱き合っていると、サクナからは最初に出会ったときと同じように、仄かにオレンジの香りがします。
(…だって、あなたがいいんだもの)
スグリ姫はぎゅっと抱き付いて、自分にも聞こえない位、の小さな声で言いました。
(この先一緒にいる人を、たった一人しか選べないなら)
抱き付いたのと同じ位の強さで抱き返されて、姫は温かい香りに身体中包まれる様に感じました。
(どんなに大変な事が有るって言われても、私はあなたと居たいんだもの)
「指輪以外の装飾品は、用意してあるのか?」
「そこの鏡台の所にあるわ」
二人はしばらく静かに抱き合っていましたが、いつまでもそのままで居る訳にも行きません。サクナは姫の返事を聞いて、姫の手を引いて鏡台の前に行き、姫を椅子に座らせました。
「着けてやる。ちょっとだけ下向け」
「うん。ありがとう」
姫が椅子の上でサクナに背を向け手俯くと、赤い石の嵌った金の首飾りの冷たい重みが、胸元から首筋にかけて乗りました。その冷たさを和らげるように、留め具のある項の辺りに温かく柔らかい唇がそっと触れて、離れました。
「ううん、ごめんなさい。私が自分で決めたんだから、淋しくなったりしちゃダメだって、分かってるんだけど…」
最初から分かっていた事ですし、何度か話し合ったた事でしたが、何度話しても姫が故郷から遠いこの地に嫁いで来なくてはならないという事実は変えようがありません。そして、ここには誰も連れて来ないというのは、誰も自分の我が儘に付き合わせたくないという、姫の希望でありました。
「構わねぇから、淋しい時は淋しくなってろ。お前をここに来させる事自体は変えようがねぇが、他に出来る事が有れば何でも言え」
「ありがと…」
目を閉じて抱き合っていると、サクナからは最初に出会ったときと同じように、仄かにオレンジの香りがします。
(…だって、あなたがいいんだもの)
スグリ姫はぎゅっと抱き付いて、自分にも聞こえない位、の小さな声で言いました。
(この先一緒にいる人を、たった一人しか選べないなら)
抱き付いたのと同じ位の強さで抱き返されて、姫は温かい香りに身体中包まれる様に感じました。
(どんなに大変な事が有るって言われても、私はあなたと居たいんだもの)
「指輪以外の装飾品は、用意してあるのか?」
「そこの鏡台の所にあるわ」
二人はしばらく静かに抱き合っていましたが、いつまでもそのままで居る訳にも行きません。サクナは姫の返事を聞いて、姫の手を引いて鏡台の前に行き、姫を椅子に座らせました。
「着けてやる。ちょっとだけ下向け」
「うん。ありがとう」
姫が椅子の上でサクナに背を向け手俯くと、赤い石の嵌った金の首飾りの冷たい重みが、胸元から首筋にかけて乗りました。その冷たさを和らげるように、留め具のある項の辺りに温かく柔らかい唇がそっと触れて、離れました。