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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第12章 茶会と果実酒
「お前は、俺んだ」
「うん」
サクナは次に布張りの箱の中から足環を手に取り、姫の前に跪きました。

「何が有っても、だ」
「ん…っ」
右足を取って足に環をはめ、足首から膝にかけてをするりと撫でると、滑らかな足の甲に口づけました。

「お前がどこに居て、何をしててもだ。忘れんな」
「うん…」
そして、首飾りと足環と揃いの指輪が嵌った左手を撫でて手に取り、掌と指輪に恭しく口づけました。

「…バンシル呼んでも大丈夫か?」
「…うん。」
姫が頷くのを待ってサクナは立ち上がり、姫の髪が崩れないように、軽く髪に口づけました。

「支度が終わったら、館まで一緒に行く。仕事が有るからな。茶会が済んだらお前を連れて帰る。茶会は女しか入れねぇから同席出来ねぇが、側に居るから心配すんな」
姫の髪を一撫でしながら、サクナは不機嫌そうに言いました。

「何かあったら茶会の決まりなんざ無視して、部屋まで乗り込んでやる」
「ありがと。でもきっと大丈夫よ、しっかり勤めるわ」
先程泣いた後とは違う柔らかな笑顔を見せたスグリ姫に、サクナは不機嫌顔を崩して薄く笑いかけました。

「そうだな。茶会はお前の仕事だったな。ちょっと待ってろ、バンシル呼んでくる」
「…サクナ?」
姫のおでこに口づけて部屋を出ようとするサクナを、姫はふと呼び止めました。

「何だ?」
「今日、あちらでお仕事だったの?」
「ああ、仕事だぞ?」
この家の当主は扉を開けながら、婚約者に向かってにやりと笑いました。

「大事な仕事だ。お前が戻ってくるのを大人しくして良い子で待ってるって、大仕事だぞ」
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