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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第12章 茶会と果実酒
「初めまして。ようこそいらっしゃいませ、スグリ様」
サクナと別れ、出迎えのローゼルに連れられて茶会の場に赴いたスグリ姫は、この家の三人のご婦人方に迎えられました。
現在の女主人である奥方様、今は半ば隠居の身である大奥様、ローゼルの兄嫁である若奥様、です。
奥方様は、ローゼルの義理の母でした。
ローゼルと兄二人の母は、ローゼルが十代の頃に亡くなっており、ローゼルの父は周囲の勧めでしばらくして後妻を娶りました。
結婚するまでは大人しく落ち着いた婦人と思われていた義母は、もともとそういう性質だったのか、後妻としてこの家に入ったことでそうなっていったのか、少しずつ変わっていきました。
嫁入って大分経った今では、サクナに「女狐」と揶揄される様な一癖ある奥方様としてこの家の内で君臨しています。それはこの家に関わるものなら誰もが知っている、公然の秘密でありました。
大奥様は、ローゼルの祖母です。
家付き娘で婿を取って家を継ぎ、数年前まで果物園に深く関わる家々の集まる長老会議の一員でありました。現在は公の仕事からは退いておりますが、未だにこの家でもこの地でも、大きな発言権を持っているようです。
若奥様は、ローゼルの兄に数年前に嫁いだばかりです。
年はローゼルよりも一つ上、夫婦の間にまだ子は無く、その為かまだ娘らしさの残る、優しげな雰囲気の女性です。
「初めまして。本日は、お招き有り難うございます」
ローゼルとサクナに聞いた経歴を思い浮かべながら三人のご婦人方と挨拶を交わして、茶会は始められました。
熟れ過ぎて割れてもメロンはメロン、スグリ姫でも姫は姫。
バンシルも言っていた通り、しっかりしさえすれば、姫の茶会での賓客としての振る舞いには非の打ち所が有りませんでした。
輝くような笑顔と洗練された仕草でお茶を楽しみ、お茶や調度やお菓子などの当たり障りの無い話題を選んでご婦人方に気さくに話しかけ、四人の誰をも取りこぼすことなく、さり気なく感じよく誉めました。
奥方様からは時折棘が混ざる様な話題も投げられましたが、その度に姫は心の中で(お母様…お母様…)と唱えながら、時には(バンシル…バンシル…)と唱えながら卒なく受け答えし、気がつけば茶会の場には和やかな良い雰囲気が漂っておりました。
最初は内心冷や冷やしていたローゼルも、途中からはやや寛いでお茶を楽しむ事が出来た程でした。
サクナと別れ、出迎えのローゼルに連れられて茶会の場に赴いたスグリ姫は、この家の三人のご婦人方に迎えられました。
現在の女主人である奥方様、今は半ば隠居の身である大奥様、ローゼルの兄嫁である若奥様、です。
奥方様は、ローゼルの義理の母でした。
ローゼルと兄二人の母は、ローゼルが十代の頃に亡くなっており、ローゼルの父は周囲の勧めでしばらくして後妻を娶りました。
結婚するまでは大人しく落ち着いた婦人と思われていた義母は、もともとそういう性質だったのか、後妻としてこの家に入ったことでそうなっていったのか、少しずつ変わっていきました。
嫁入って大分経った今では、サクナに「女狐」と揶揄される様な一癖ある奥方様としてこの家の内で君臨しています。それはこの家に関わるものなら誰もが知っている、公然の秘密でありました。
大奥様は、ローゼルの祖母です。
家付き娘で婿を取って家を継ぎ、数年前まで果物園に深く関わる家々の集まる長老会議の一員でありました。現在は公の仕事からは退いておりますが、未だにこの家でもこの地でも、大きな発言権を持っているようです。
若奥様は、ローゼルの兄に数年前に嫁いだばかりです。
年はローゼルよりも一つ上、夫婦の間にまだ子は無く、その為かまだ娘らしさの残る、優しげな雰囲気の女性です。
「初めまして。本日は、お招き有り難うございます」
ローゼルとサクナに聞いた経歴を思い浮かべながら三人のご婦人方と挨拶を交わして、茶会は始められました。
熟れ過ぎて割れてもメロンはメロン、スグリ姫でも姫は姫。
バンシルも言っていた通り、しっかりしさえすれば、姫の茶会での賓客としての振る舞いには非の打ち所が有りませんでした。
輝くような笑顔と洗練された仕草でお茶を楽しみ、お茶や調度やお菓子などの当たり障りの無い話題を選んでご婦人方に気さくに話しかけ、四人の誰をも取りこぼすことなく、さり気なく感じよく誉めました。
奥方様からは時折棘が混ざる様な話題も投げられましたが、その度に姫は心の中で(お母様…お母様…)と唱えながら、時には(バンシル…バンシル…)と唱えながら卒なく受け答えし、気がつけば茶会の場には和やかな良い雰囲気が漂っておりました。
最初は内心冷や冷やしていたローゼルも、途中からはやや寛いでお茶を楽しむ事が出来た程でした。