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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第12章 茶会と果実酒
「どうぞ、召し上がって。まずは杏のお酒ですわ。薄めた方がお好みでしたら、おっしゃって下さいね」
「ありがとうございます、頂きます」
姫は、ほんの二口ほどが注がれた、小さなグラスを手に取りました。
(薄めずにそのまま頂く方が、味がよく分かるかしら)
そう思った姫は、そのままのグラスに口を付けました。そんな姫をローゼルが物凄い目で見ていましたが、姫の方は全く気付いておりません。
グラスに口を寄せると、果実の香りが仄かに感じられました。が、杏だとはっきり分かる程ではありません。
酒を口に含んで初めて、香りと味がはっきりと分かりました。
「美味しい!…とろっとして甘酸っぱくて、美味しいです!」
初めて飲んだ果実酒は、味も濃く度数も強めでした。薄めるかと聞かれたのは、そのまま飲むには強いお酒だからかしらと姫は思いました。しかし、先程も思った通り、味そのものは薄めないほうがはっきり分かりそうなので、酒の強さが分かっても薄めようとは思いませんでした。
「お気に召しまして?こちらは、桃のお酒。どうぞ、お比べになって」
「頂きます」
今度は先程よりもやや甘い香りがしました。口に含むと、花とも果実とも思える、華やかな香りが致します。桃だと言われれば分かりますが、生の桃のようにはっきりした香りではありません。味は、先程の杏と似てはいるものの、酸味はあまり感じられませんでした。
「いかが?」
「美味しいです。まろやかで、柔らかい味がしますわね」
「こちらはリンゴです。ほんの少し香辛料が入っておりますの」
リンゴの酒は、漬けてある酒の種類が違うのか、とろみが少なく水の様にさらっとしていました。奥方様が言った通り、リンゴの甘い香りの陰に、香辛料のぴりっとした香りも感じます。この酒は口に入れる前からリンゴの香りがしましたが、口に含むと香辛料と酒自体の香りが強く立ち、残念ながらリンゴらしさは減ってしまいました。
(クロウさんのお茶は、リンゴと香辛料が両方しっかり香ってたわよね…お酒は、漬けて時間が経つから?それとも、紅茶やお酒との組み合わせ方で変わるのかしら?)
姫は少々ぽうっとなりながらも、帰ったら忘れずに家令に聞いてみよう、と思いました。
「リンゴはいかが?」
「すっきりしていて、飲みやすいですわ」
「そうそう。リンゴと言えば」
奥方様は次に注ぐ酒を選びながら、姫を見て微笑みました。
「ありがとうございます、頂きます」
姫は、ほんの二口ほどが注がれた、小さなグラスを手に取りました。
(薄めずにそのまま頂く方が、味がよく分かるかしら)
そう思った姫は、そのままのグラスに口を付けました。そんな姫をローゼルが物凄い目で見ていましたが、姫の方は全く気付いておりません。
グラスに口を寄せると、果実の香りが仄かに感じられました。が、杏だとはっきり分かる程ではありません。
酒を口に含んで初めて、香りと味がはっきりと分かりました。
「美味しい!…とろっとして甘酸っぱくて、美味しいです!」
初めて飲んだ果実酒は、味も濃く度数も強めでした。薄めるかと聞かれたのは、そのまま飲むには強いお酒だからかしらと姫は思いました。しかし、先程も思った通り、味そのものは薄めないほうがはっきり分かりそうなので、酒の強さが分かっても薄めようとは思いませんでした。
「お気に召しまして?こちらは、桃のお酒。どうぞ、お比べになって」
「頂きます」
今度は先程よりもやや甘い香りがしました。口に含むと、花とも果実とも思える、華やかな香りが致します。桃だと言われれば分かりますが、生の桃のようにはっきりした香りではありません。味は、先程の杏と似てはいるものの、酸味はあまり感じられませんでした。
「いかが?」
「美味しいです。まろやかで、柔らかい味がしますわね」
「こちらはリンゴです。ほんの少し香辛料が入っておりますの」
リンゴの酒は、漬けてある酒の種類が違うのか、とろみが少なく水の様にさらっとしていました。奥方様が言った通り、リンゴの甘い香りの陰に、香辛料のぴりっとした香りも感じます。この酒は口に入れる前からリンゴの香りがしましたが、口に含むと香辛料と酒自体の香りが強く立ち、残念ながらリンゴらしさは減ってしまいました。
(クロウさんのお茶は、リンゴと香辛料が両方しっかり香ってたわよね…お酒は、漬けて時間が経つから?それとも、紅茶やお酒との組み合わせ方で変わるのかしら?)
姫は少々ぽうっとなりながらも、帰ったら忘れずに家令に聞いてみよう、と思いました。
「リンゴはいかが?」
「すっきりしていて、飲みやすいですわ」
「そうそう。リンゴと言えば」
奥方様は次に注ぐ酒を選びながら、姫を見て微笑みました。